【特別試合 其の七十一 阿礼蘭紗:空手・琉球古武道】   紹介者:JJJファン様


 犠牲者の名は「阿礼(あれい)蘭紗(らんしゃ)」。18歳。身長165cm、B96(Hカップ)・W63・H91。

 栗色の髪を姫カットのロングヘアにして、額で左右に分け、前、横と一定の長さで切り揃えている。目は切れ長で、少し釣り目気味。不敵な笑みが似合う美少女。

 中学・高校・大学一貫の名門校に通っており、才色兼備、文武両道という学内でも人気の先輩。存在感はあるが威圧感はなく、高貴な雰囲気が嫌味にならない。髪型もあって平安時代のお姫様のように感じられるため、彼女を慕う学生たちはひそかに「蘭しゃま・・・」と呼ぶのがお約束となっている。

 5歳のときに実母が再婚。二つ年下の義理の弟ができた。この義弟への溺愛ぶりが凄まじく、ある種異常な接し方に、周囲から注意を受けるほど。しかし本人はあくまで「姉弟」としての範囲内だと言い張っている。

 その愛する義弟がある日、かなりの怪我をして帰ってきた。しかし義弟本人は怪我の理由に口を閉ざし、決して蘭紗に語ろうとはしない。愛する義弟の態度にショックを受ける蘭紗に、見知らぬ番号から連絡があった。

 義弟が怪我をしたのはレディースチームの一人が関わっていること、怪我をさせた本人と闘う場を用意すること、ファイトマネーも用意することなどを告げる電話に、普段なら怪しんだであろう蘭紗は即座に参戦を受諾した。

 そこで待つのが、卑劣な罠と新たな出会いだと知る筈もなく。


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 野次が飛ばされる。指笛が飛ばされる。

 女性を貶めるような内容の絶叫も、煽るような甲高い音も、長い栗色の髪をポニーテールに纏めた蘭紗の耳には届かない。その目はひたとリングに据えられている。

(彼女が・・・!)

 蘭紗の視線が、リングで待つ女性を捉える。このときの蘭紗の表情は、般若も斯くや、というほどの迫力だった。

 蘭紗は女性からまったく視線を外さず、花道を進んだ。


 リングで二人の美少女が向かい合う。その美貌は、どちらも甲乙つけ難い。

「赤コーナー、『ボンバーヒップ』、栄面伊沙羅!」


 もう一人の犠牲者の名は「栄面(えいめん)伊沙羅(いさら)」。18歳。身長172cm。B92(Eカップ)・W67・H100。

 光沢ある黒髪を顎まで伸ばしたおかっぱ頭の美少女。前髪は額を隠すように眉の上で切り揃えている。マッチ棒が乗りそうな長いまつげの伸びた瞼は、閉じているかのようで常に微笑んで見える。肌は落ちた水滴を弾き返すような張りで、母性を感じさせるふくよかな肢体、特に発育の良さが顕著なヒップは衣服がはち切れんばかりで、男には垂涎ものの魅力だ。

 その肉体美のみならず優雅な佇まいに謙虚な物腰、丁寧な口調と、第一印象は淑やかなお嬢様だが、実は榊(さかき)式壬(しきみ)のレディースチームにおけるNo.2。


 前回、<地下闘艶場>に囚われていた式壬の解放を目指し、式壬本人と共にタッグマッチで参戦した。男たちに卑怯な手段で拘束され、式壬共々全裸に剥かれ、プライドを削り取られるような嬲り責めを受け続けた。しかし決して心折れることなく思考し続け、最後は逆転の一手で式壬解放を達成した。

 試合で嬲られたことが原因なのか、成熟した大人の色香を放ち始めている。


 今日の伊沙羅の衣装は、俗に言うバニーガールだった。

 黒いバニースーツは胸元がV字カットされたタイプで、谷間も露わなために胸が零れてしまいそうだ。

 バニースーツの上には、ピンクの燕尾服が重ねられている。燕尾服は金色の縁取りがなされ、袖はなく、肩から腕が剥き出しとなっている。

 存在感抜群のヒップの上には、白い尻尾の飾りが付けられている。

 肉付きの良い脚を黒いタイツが包み、一層肉感的に見せている。

 伊沙羅の手には、黒塗りのステッキがある。その長さは、持ち手のない杖のようだ。


 蘭紗の口から、軋るような声が洩れる。

「栄面、伊沙羅・・・!」

 今まで話したことはないが、顔は知っている。同じ学校、学年の有名人だ。その有名人にレディースという裏の顔があっただけでは済まず、愛する義弟に怪我を負わせた。それが蘭紗の心の奥底から怒りを生じさせている。


「青コーナー、『My Brother, My Life』、阿礼蘭紗!」

 名前がコールされた蘭紗は、乱暴にガウンを脱ぎ捨てる。その下にあったのは、緑を基調としたチアリーダーの衣装だった。

 上は袖なしタイプで、胸元部分は大きく丸い穴が開けられており、Hカップが形作る胸の谷間がはっきりと見えている。しかも丈が短く、蘭紗の鍛えられた腹部も見えている。

 下はスカートタイプで、細かいひだが入っている。こちらも丈が短く、蘭紗が身動きするたびにショーツが見え隠れする。

 蘭紗は周囲から浴びせられる欲望の視線に気づきもせず、携えてきたトンファーを握り締めた。


 蝶ネクタイを締めた中年のレフェリーが、伊沙羅へと近づいていく。

「久しぶりだな、栄面選手。元気にしていたか? バニーガール姿が良く似合っているじゃないか」

(あの二人、面識があるの? そうか、不正を働くつもりね)

 蘭紗はもう正常な思考ができていない。伊沙羅の全身から発せられる不快感にも気づいていない。

「・・・お久しぶり、ですわね」

「もうわかっているとは思うが、ボディチェックを受けてもらおうか」

「ええ、どうぞ」

 伊沙羅は抵抗の素振りも見せず、力を抜いた。

「素直で助かるよ」

 レフェリーはいきなり伊沙羅の両胸を掴み、ゆっくりと揉み込んでいく。

(まさか、色仕掛けまで行うなんて!)

 その光景を、蘭紗はまさかの意味に取った。


 蘭紗は馬鹿ではない。ただし、重度の「義弟馬鹿」だ。その「義弟馬鹿」の蘭紗にとって、伊沙羅は義弟の仇だ。その仇である相手の行動すべてに苛立ち、誤解の嵐を生んでしまう。


 蘭紗の内心など知りもせず、レフェリーは伊沙羅にセクハラボディチェックを続ける。

「栄面選手、随分とボリュームが増したんじゃないか?」

 レフェリーの手が、伊沙羅の身体の上を這い回る。

「おっぱいも」

 伊沙羅の左胸を揉み、

「尻も」

 伊沙羅のヒップを撫で、

「前回の試合より確実に大きくなっているな」

 また両胸に戻ってくる。

「また今日も、おっぱいが大きくなってしまうかもなぁ」

 バニーガール姿の伊沙羅の両胸を揉みながら、レフェリーが下卑た笑みを浮かべる。伊沙羅はなんの言葉も返さないが、伊沙羅を良く知る者が見れば、普段よりも表情が硬いことがわかっただろう。

(親しげに会話するなんて・・・さては、不正の相談ね!)

 しかしこのやりとりも、蘭紗にかかれば、蘭紗を貶めるための会話になってしまう。蘭紗の視線の先で、レフェリーが伊沙羅の胸から手を放す。そのまま伊沙羅の背後に回った。

「やっぱり、栄面選手と言えばお尻だな」

 膝立ちとなったレフェリーは、伊沙羅の尻肉を両手の指で揉み込んでいく。

「うーん、外人並みにデカいとは。これは揉み甲斐・・・いやいや、調べ甲斐があるな」

 思わず本音を零しながら、レフェリーは伊沙羅のヒップを揉み続ける。伊沙羅は棒立ちのまま動こうとはしない。

「うん、お尻はこれくらいでいいか」

 伊沙羅のヒップから手を放したレフェリーは立ち上がり、後ろから抱きつくようにして伊沙羅の左の胸を揉みだす。そして、右手を秘部に伸ばし、そのまま弄り始める。伊沙羅は一瞬身を硬くしたものの、両手を握り込んでじっと耐える。

「この前のことは忘れていないからな?」

 セクハラボディチェックを続けながら、レフェリーが伊沙羅の耳元で囁く。前回、全裸にされながらも勝利した伊沙羅は、試合後にレフェリーへと「お仕置き」をしている。

「今日もたっぷりと悦んでもらうつもりだから、楽しみにしていてくれよ」

 股間を伊沙羅のヒップに押しつけながら、レフェリーはセクハラを続ける。

(ここまで色仕掛けを続けるなんて!)

 蘭紗の怒りは更に燃え上がっていた。レフェリーが続けているセクハラを、憎い相手である伊沙羅がさせていると思い込む。

「ということで、前菜はここまでだ。試合を楽しみにしておくよ」

 ようやくレフェリーが伊沙羅から離れ、蘭紗へと向かってくる。

「待たせたな、阿礼選手。それじゃあ・・・」

 蘭紗はレフェリーへといきなり豊かな胸を突き出し、告げる。

「先程の行為、私にもやりなさい!」

「えっ・・・?」

 蘭紗の予想外の行動に、レフェリーが戸惑う。蘭紗にしてみれば、伊沙羅が色仕掛けを行ったことで、偏ったレフェリングをされても困る。それ故の申し出だった。

「ま、まあ、ボディチェックは必ず受けて、もら・・・う・・・」

 蘭紗の身体に手を伸ばそうとしたレフェリーだったが、何故か動きが止まる。それは、蘭紗から放出される殺気のせいだった。しかも怒りによって、蘭紗の表情はまるで般若のようだ。

 その怒りはレフェリーに向けられたものではないが、レフェリーにしてみれば恐ろしくて仕方がない。簡素にボディチェックを終えると、すぐに蘭紗から離れる。

 その途端、蘭紗が歩を進める。それに呼応し、伊沙羅も歩み寄る。

 リングの中央で、美少女同士が向かい合う。

 ポニーテールの蘭紗は、殺気を隠そうともせずにおかっぱ頭の伊沙羅を睨みつける。しかし、伊沙羅のほうはまるで動じていない。潜った修羅場の数が違う。

「覚悟なさい・・・」

「どうぞ、お手柔らかに」

 その視殺戦に耐え兼ねたレフェリーだったが、ストレスを押し殺して二人を下がらせ、ゴングを要請する。


<カーン!>


「あの子の仇!」

 蘭紗は怒りのままに突進し、トンファーを振り抜く。伊沙羅の頭部を撃ち抜く筈だった一撃は、伊沙羅のステッキに受け止められていた。

 蘭紗は即座にトンファーを引き、喉へと突きを出す。伊沙羅はステッキを旋回させることでこれを弾き、するりと間合いを放す。

「おおおっ!」

 蘭紗の咆哮とともにトンファーが襲いかかり、伊沙羅が冷静にステッキで防ぐ。プロポーション豊かな美少女が身を翻すたび、丸みを帯びた部分が揺れてその存在を誇示する。

(なぜ、本気を出さないの!)

 闘いの中、伊沙羅の高い実力を感じる。そして、まだ本気を出していないことも。手を抜かれていると考えた蘭紗は、ポニーテールを振り乱し、一層激しく攻め立てる。

 下段から顎を狙った一撃を、伊沙羅のステッキが受け止める。そのとき、伊沙羅が口を開いた。

「・・・蘭紗さん、伝えたいことが」

 伊沙羅の小声に、蘭紗は睨みを返す。

「おそらくこの後、男たちとの試合が用意されています。お互いの体力を温存するため、早期に決着をつけましょう」

「心理戦のつもりかしら!?」

 しかし、憎むべき相手からの提案に、蘭紗は聞く耳を持たない。力任せに伊沙羅を押しやり、前蹴りを繰り出す。しかしそれを読んでいたかのように、伊沙羅は左軸足の回転で前蹴りを躱す。

(・・・おかしい)

 伊沙羅のことを良く知っている訳ではなく、当然闘っている姿など見たことはない。だが、奇妙にもどこか共感するものを感じている。それがまた蘭紗を苛立たせ、より激しい攻撃へと繋がっていく。

「くっ・・・!」

 蘭紗の後先を考えていない猛攻に、伊沙羅も押し込まれ始めた。

(ここで、決めるっ!)

 蘭紗の回転が上がる。それを伊沙羅がなんとか弾き返し、一旦大きく距離を取った。

 伊沙羅の胸が呼気で大きく膨らむのを見て、蘭紗は息もつかせまいと肉薄する。

 その瞬間だった。

「『喝』ッ!」

「っ!?」

 いきなり身体が硬直した。攻撃どころか、手足も動かない。

(どうして? 一体なにが?)

 伊沙羅の気合いを浴びた瞬間、指一本動かせなくなってしまった。


 蘭紗は知らない。伊沙羅が前回の試合に参戦した際、ある破戒僧と対戦したことを。そしてその闘いの才能で以て、破戒僧の技を会得したことを。


「申し訳ありませんが、ここで決めさせて頂きます」

 伊沙羅が謝罪をしながら、蘭紗を仰向けに寝かせる。硬直した筈の身体は何故か、伊沙羅の手に掛かるとその通りに動いてしまう。

(まずいわ、このままだと、フォール負けになってしまう!)

 そうなれば、仇を取るべき相手に敗北を喫してしまう。

(負けられない・・・あの子のためにも、負けられない!)

 義弟の無念を晴らすため、絶対に勝つのだ!

 蘭紗の気迫が、伊沙羅の技を打ち破った。

「あああっ!」

 叫びながら、左拳を振るう。

「ぐっ!?」

 予想外の一撃は、伊沙羅の右頬を抉っていた。否、伊沙羅はその反射神経で、寸前に首を捻り衝撃を逃がしていた。

「仕方ありません」

「おぐっ」

 伊沙羅の拳が鳩尾へと食い込む。強烈な一撃で動きの止まった蘭紗に、伊沙羅が改めてフォールに入る。

「ワン、ツー・・・スリーッ!」


<カンカンカン!>


 フォールが成立し、伊沙羅の勝利が決まる。伊沙羅はそっと蘭紗から退き、フォールを解く。

「・・・あああっ!」

 蘭紗はうつ伏せになり、拳でリングを叩く。義弟のためにも勝ちたかった。勝たねばならなかった。

「蘭紗さん・・・」

 伊沙羅の呼びかけに、きっ、と睨む。

「名前を呼ばれる筋合いはないわっ!」

 蘭紗の怒号に、伊沙羅は一度目を伏せる。しかし、顔を上げたときにはもう迷いはなかった。

「本当のことをお伝えしておきます。もちろん、私から見た事実ではありますが」

 そう前置きした伊沙羅は、蘭紗の義弟との間に何があったのかを話し始めた。


 実は蘭紗の義弟も、蘭紗と伊沙羅と同じ学校に通っている。その義弟がなんと、伊沙羅に告白したと言うのだ。


「なんてことをっ!」

「お怒りはわかりますが、まだ続きがあります」


 義弟の告白を、伊沙羅は穏やかに、しかし有無を言わさぬ雰囲気ではっきりと断った。


「なぜ、あの子ほど良い子の告白を断るのよ!」

「・・・続けますよ」


 義弟はその帰り道、あまりまともではない連中に絡まれたらしい。普段ならば相手にしなかっただろう義弟は、告白を断られたショックで思わず手を出してしまった。しかし多勢に無勢であり、袋叩きにされたそうだ。

 まだ近くに居た伊沙羅がそれに気づき、男たちから義弟を救い出した。しかし義弟は異性に助けられた悔しさと情けなさだけではなく、告白を断られた本人から救われたことで、手当てしようとした伊沙羅を振り切って走り去ったと言う。もちろんこのとき、義弟が伊沙羅の正体を知る由もない。


「そんなこと・・・信じられる筈が・・・」

「ああ、栄面選手の言ったことは本当だ。裏付けも取ったしな」

 レフェリーが伊沙羅の発言を肯定したことで、蘭紗もこれ以上は否定できなくなる。

(私は・・・私は・・・!)

 蘭紗の心が大きく揺らぐ。本気を出して負けたこと、自分が<地下闘艶場>に利用されていたこと、そしてなにより、義弟が自分以外の女性に想いを寄せていたこと! これらのショックが重なり、放心状態に陥っていた。

 しかし、<地下闘艶場>はここからが本番だった。

「さて、真実がわかったところで、もう一試合してもらうぞ」

「そんな話、聞いていないわ!」

 レフェリーの発言に驚く蘭紗だったが、レフェリーも冷たく返してくる。

「嫌ならいいんだ、帰っても結構。栄面選手一人が居ればどうにかなるからな」

「ええ、私もそれをお勧めします。どんな卑劣な手段も採ってくる場所ですよ、ここは」

 伊沙羅までも帰宅を進めてくる。

 しかし今、蘭紗は身体を震わせていた。恐怖からではない。

 自分を騙し、利用した<地下闘艶場>への怒り。

 濡れ衣と知りながら闘いの場に現れ、蘭紗を気遣うような言動をしてくれた伊沙羅への申し訳なさ。

 自分との闘いで消耗させてしまった伊沙羅への借り。

 そして、義弟絡みの対抗意識。

 それらが綯い交ぜとなり、蘭紗の身体を震わせていたのだ。

「いえ、私も闘うわ。そうでなければ、私の気が済まない!」

 蘭紗の決意に、レフェリーが下卑た笑みを浮かべる。

「そうか、では、二人共次の試合で頑張ってもらおうか」

 厭らしく笑うレフェリーを、蘭紗は睨みつけた。


「次の試合は、バトルロイヤルで闘ってもらう」

「バトルロイヤル?」

 蘭紗の疑問にレフェリーが答える。

 バトルロイヤルとは、複数人が一斉に闘い、最後に残った選手が勝者となる試合形式だ、と。

「となると、向こうの狙いは・・・」

「ええ、私たちのみを狙ってくるでしょうね」

 蘭紗の呟きに、伊沙羅が応える。蘭紗は眉を顰めたが、何も言わなかった。


 やがて、花道に次の試合の選手たちが姿を現す。予想通り、全員が男性だ。

 リングに上がった男たちは、野獣染みた気配を纏い、無表情に、欲望に目をギラつかせと、三者三様に蘭紗と伊沙羅を見つめていた。


「バトルロイヤル戦に出場する選手の紹介を致します。

『暴剣』、浦賀餓狗郎!

『フライングモンキー』、猿冠者!

『トータストンファー』、亀河健史!

以上の三名です!」

 浦賀(うらが)餓狗郎(がくろう)は口に楊枝を咥え、懐手をした剣道着を着た男だった。右肩に竹刀を乗せた姿は、まるで無頼漢のようだ。

 猿冠者(さるかじゃ)は烏帽子を被り、顔に猿を思わせる白と赤のメイクをし、侍を思わせる薄水色の裃と白足袋を身に着けている。仮面を着けているかのように無表情だが、目だけがぎょろぎょろと動いている。こちらは武器を持っていないようだ。

 亀河(かめがわ)健史(たけし)は蘭紗同様トンファーを持っており、二人の美少女の身体を舐めるように見つめている。

「余計な武器を隠していないか、ボディチェックを受けてもらうぞ」

 レフェリーがそう言うと、男性選手のボディチェックを進めていく。伊沙羅に行ったボディチェックとはまるで違う。疑問に思う蘭紗だったが、レフェリーが目の前にやってきた。

「それじゃ、阿礼選手からボディチェックだ」

「わかりました」

 蘭紗は頷き、ボディチェックを受け入れる。

(先程程度なら、我慢は・・・っ!)

 そう考えた矢先、レフェリーが両胸を鷲掴みにしてくる。

「なっ・・・」

「どうした阿礼選手。なにか言いたいことでもあるのか?」

 レフェリーはにやつきながら、蘭紗のHカップバストを揉み込んでくる。

「待ちなさい、ここまでのセクハラは認められません!」

 レフェリーの手を振り払い、睨みつける。

「なんだ、ボディチェックを受けないのか? それなら退場してくれ、栄面選手だけに頑張ってもらうからな。まあ、栄面選手が負けたときには、今後も<地下闘艶場>で闘い続けてもらうことになるがな」

 レフェリーの言葉は、脅しに聞こえない。蘭紗がこのまま帰れば、伊沙羅には暗い未来が待っているだろう。

「今からでも間に合います、退場してください」

 伊沙羅本人も退場を勧めてくる。しかし、蘭紗はもう決めたのだ。伊沙羅のために闘う、と。

 レフェリーに顔をしっかりと向け、はっきりと告げる。

「ボディチェックを、続けてください」

「うん? それだけか?」

「お、お願いします」

 屈辱の科白で、セクハラボディチェックを希望する。

「そうかそうか、お願いされたなら仕方がない。ボディチェックを続けるとしようか」

 再びレフェリーが蘭紗の両胸を揉んでくる。

「これだけデカいおっぱいだからな、しっかりと調べないとなぁ」

 レフェリーのにやつき具合を見れば、自分の欲望のために行っているのがすぐわかる。しかし、試合を成立させるにはこれに耐えねばならない。

(さっきのも、色仕掛けじゃなかったのね・・・)

 今更ながらに、先程は頭に血が上っていたことを思い知らされる。普段通り冷静に観察できていれば、伊沙羅の本心がわかった筈だ。

 義弟以外の男の手が、Hカップを誇るバストを好き勝手に変形させる。それは、屈辱と羞恥だった。しかし、蘭紗は耐える。一度口にした自分の言葉を、裏切らないために。

「これだけ大きいと、間に何か隠せそうだな」

 レフェリーは左手で胸揉みを続けながら、空いた衣装の穴から右手を胸の谷間に突っ込んでくる。

「っ!」

 いきなり誓いを破ってしまいそうだった。上げかけた拳を、精神力で押さえつける。

 レフェリーは蘭紗の様子など気にもせず、好き勝手にHカップバストを弄り回す。

「うーん、何もないようだな」

 そう言いながら蘭紗の胸の谷間から手を引き抜いたレフェリーは、何故か蘭紗の両胸を弾ませてくる。

「うん、おっぱいには何も隠していないようだ」

 ようやくレフェリーが胸から手を放し、蘭紗がほっとしかけたときだった。

「次は、スカートを捲ってもらおうか」

「・・・は?」

 予想外の指示に、気の抜けた返事を返してしまう。

「聞こえなかったのか? スカートを自分で捲ってくれ、と言ったんだ」

 しかし、レフェリーが再度指示してくる。

「蘭紗さん・・・」

 伊沙羅が小声で促してくる。蘭紗は奥歯を噛みしめ、感情を磨り潰す。

 一度大きく深呼吸し、ミニスカートに手をやる。それでもすぐには覚悟が決まらない。

「おいおい、やる気がないなら帰ってもいいんだぞ?」

 レフェリーがわざとらしく胸をつついてくる。

「っ・・・」

 一瞬湧きかけた怒気を、息を止めることで抑え込む。ミニスカートを掴み、思い切って捲り上げる。途端に観客席から野次や指笛が飛んでくる。それが蘭紗の屈辱を更に煽る。

「なんだ、やればできるじゃないか。それじゃ、動かないでくれよ」

 そう言った途端、レフェリーは蘭紗の秘部に触れた。

「んなっ・・・!」

「ここが一番調べないといけない場所だからな。男にはない隠し場所だ」

 レフェリーがにやつきながらも、秘部を撫で回す。

(あ、あの子にも触らせたことはないのに!)

 若干危ないことを思いながらも、蘭紗はレフェリーのセクハラを耐える。

「ああ、ここも調べないとな」

 レフェリーはしゃがんだままの体勢で、蘭紗のヒップを撫で回す。そのためレフェリーの顔が秘部へと迫り、その鼻息が当たってくる。

(こ、この、変態レフェリー・・・!)

 それでも蘭紗は何もできない。できるとすれば、早くセクハラボディチェックが終われと念じることだった。


「うーん、どうやら何も隠してはいないようだ」

 ようやくレフェリーが蘭紗の下半身から手を放し、立ち上がる。立ち上がりかけに蘭紗のHカップバストを掴んで揉み上げてから、というのがまた蘭紗を苛立たせる。

「さあ、栄面選手もボディチェックを受けてもらおうか」

 先程散々ボディチェックという名のセクハラを行ったと言うのに、レフェリーはまたも伊沙羅にボディチェックを強要する。

「ええ、わかっています」

 伊沙羅は頷き、レフェリーに身を任せる。

「栄面選手は素直で助かるよ」

 そう言いながら、レフェリーは伊沙羅の背後に回る。レフェリーの手が、バニースーツの胸元へと差し込まれた。

「っ!」

 いきなりの行動に伊沙羅は息を呑んだが、それでもじっと動かない。レフェリーは伊沙羅の生の乳房の感触を楽しみながら、更に奥へと指を進める。

「うん? なんだこれは?」

 レフェリーはわざとらしく乳首を転がしながら、伊沙羅に確認する。

「それは私の乳首です。凶器ではありません」

「本当にそうか? 段々硬くなってきているぞ? まさか、気持ち良くなっているのか?」

「いえ、刺激で硬くなっただけです」

「怪しいな、しっかりと調べないといけないな」

 レフェリーは両方の乳首を弄りだし、自分の腰を伊沙羅の迫力ヒップへと押しつける。

「おいおい、乳首がここまで硬くなるか? 本当は凶器じゃないのか?」

「いいえ、乳首で間違いありません」

 時折びくつきそうになる身体を精神力で抑え込み、伊沙羅は淡々と否定する。

「そうか、それなら・・・そうだ、阿礼選手、こっちに来てくれ」

 レフェリーの手招きに、蘭紗は渋々近づく。

「おっぱいをこっちに突き出してくれ」

 そう言ったレフェリーの手が、蘭紗の衣装の裾から潜り込み、更にブラの中にまで侵入してくる。

「なっ、何をして・・・!」

「栄面選手のおっぱいに付いているのが、乳首なのか凶器なのか確認したくてな。比べれば良くわかるだろう? それとも、栄面選手だけ失格にしようか?」

 にやにやと笑いながら、レフェリーは左手で伊沙羅の左乳首を転がし、右手で蘭紗の左乳首を弄る。

(こ、ここまで卑怯なことをするなんて・・・!)

 蘭紗にしてみれば、今更伊沙羅を失格にされるわけにはいかない。それならば、レフェリーのあからさまなセクハラにも耐えねばならない。

「うん? 阿礼選手、乳首が硬くなってきたな」

「・・・」

「違うのか? なら、これも凶器か?」

「ち・・・乳首、です・・・」

 伊沙羅のように淡々とは返せず、蘭紗はつっかえてしまう。

「うん? なんだって?」

 しかも、レフェリーがわざとらしく聞き返してくる。

「・・・乳首です!」

 羞恥を堪え、蘭紗は叩きつけるように言う。

「ああ、やっぱり乳首か」

 それでも一つ頷いただけで、レフェリーは蘭紗と伊沙羅の乳首を弄り続ける。

「うーん、少し感触が違うような気がするな」

「・・・個人的な差異では?」

 伊沙羅が静かに告げる。

「ま、そうだな。それなら、栄面選手のも乳首だな」

 レフェリーは最後とばかりに、二人の乳首に振動を加える。

「栄面選手、乳首を硬くするような紛らわしい真似はしないでくれ」

 レフェリーは美少女二人の胸元から手を抜く。しかし、伊沙羅から離れようとはしない。

「まだこっちも調べないといけないな」

 レフェリーは左手で伊沙羅の左胸を揉みながら、右手で伊沙羅の秘部を弄る。蘭紗はセクハラを耐え続ける伊沙羅を見たくなく、そっと視線を外した。


「うん、何も隠していないようだな」

 レフェリーが最後に伊沙羅のヒップを撫で回し、離れていく。

 長いボディチェックがようやく終わった。自分だけではなく、伊沙羅にも酷いセクハラを行ったレフェリーを、蘭紗は睨む。

 しかしそれにも気づかず、レフェリーは上機嫌でゴングを要請した。


<カーン!>


「蘭紗さん、ここは協力しましょう」

 伊沙羅がそう提案してくるが、蘭紗は迷ってしまった。事実がわかったとはいえ、先程まで憎んでいた相手なのだ。しかも、義弟が告白したとは! 複雑な思いをすぐには切り替えられない。しかし・・・

「危ない!」

「あっ!」

 伊沙羅に突き飛ばされ、転びそうになる。思わず振り返った視線の端で、袴が翻った。

 猿冠者が異常な跳躍力を見せ、飛び蹴りを放ったのだ。迷いの中にあった蘭紗はそれに気づかず、伊沙羅によって危うく躱すことができた。しかし、いきなり二人は引き離されてしまった。

「へへっ、おっぱいの大きい姉ちゃん、楽しませてやるぜ」

 蘭紗の前に亀河が、蘭紗の右側には猿冠者が立つ。蘭紗はトンファーを右手に握り、油断なく構えを取った。


「不良の姉ちゃん、宜しくな」

 伊沙羅には浦賀が対峙する。その立ち姿と野獣を思わせる殺気は、伊沙羅の警戒心を掻き立てる。しかも男性側のほうが一人、否、レフェリーを入れれば二人多い。

 加えて、蘭紗の実力が想像以上だったことが、お互いの体力をかなり削っている。やはり――ということだろうか。

 伊沙羅は横道に逸れかけた思考を、闘いへと集中させる。相手の人数が多く、体力的に厳しいとなれば、速攻しかない。

 伊沙羅は大きく息を吸い、気迫と共に打ち出す。

「『喝』ッ!」

「呪」となった気迫が浦賀を縛る、その筈だった。

「あんな腐れ坊主の技が、俺に効くかよっ!」

 野獣染みた闘気が「呪」を阻み、霧散させる。

「しまっ・・・!」

「おらぁっ!」

 浦賀の薙ぎ払いが、伊沙羅の左横腹を強打する。呼気を放った直後に食らった一撃に、内臓が衝撃に揺さぶられる。

 もし伊沙羅が護覚の術を覚えていなければ、隙はできなかったかもしれない。便利な術ではあるが、大量の呼気を必要とする分隙があるのだ。

「あっ・・・かはっ・・・」

「かなり根性のある女らしいからな、油断はしねぇぜ・・・おらぁっ!」

「うああっ!」

 蹲って痛みに耐える伊沙羅の背に、浦賀の容赦ない一撃が叩き込まれる。

「あっ、がはっ、ぐぁぁ・・・っ」

 痛みのあまり、背中を押さえて仰け反る。

「そら、もう一丁!」

「あぐぅぅうぅっ!」

 唸りをあげて頭上から落とされた竹刀が、伊沙羅の鳩尾を抉る。内臓へと容赦なく加えられた連撃に、伊沙羅は動くことができなかった。


(あの人が!)

 伊沙羅が戦闘不能にされたのが見えたが、蘭紗は蘭紗で二対一の状況だ。今も亀河のトンファーを自らのトンファーで弾き、猿冠者の蹴りを避ける。

 亀河一人ならば苦戦もしないが、猿冠者の予想外の動きに対応できない。しかも先程の試合で体力の消耗が激しく、普段の実力が出せない。

 いつも通りに動かない身体に歯噛みしながら、蘭紗は闘いを続ける。


「それじゃ、まずは磔からかな」

 浦賀は竹刀をコーナーに立てかけると、伊沙羅の足を乱暴に引っ張る。

「おい審判、手伝え」

「人使いが荒い奴だ」

 浦賀に顎で促され、レフェリーはぼやきながらも伊沙羅の身体を起こすのを手伝う。男二人は伊沙羅の背中をロープに寄りかからせると、トップロープとセカンドロープを使い、両手を大きく広げた状態で固定する。

「それじゃ次は開脚を・・・」

「いや、こうする」

 M字開脚をさせようとしたレフェリーだったが、浦賀は伊沙羅の両脚を真っ直ぐの状態で下側のロープを使って拘束する。伊沙羅はまるで、十字架へと磔にされたようだ。

「それで、こいつを・・・」

 浦賀は伊沙羅の武器であるステッキを拾い、伊沙羅の太ももの間に差し込んで股間に当てる。

「こうすると、ほれ」

「くぅっ!」

 浦賀がステッキを揺すると、ステッキが伊沙羅の秘部を刺激する。

「それにな・・・」

「あっ、ふぅっ! ううっ!」

 浦賀が伊沙羅の両胸を掴むと、ゆっくりと揉み始める。更には乳首の辺りを指で刺激しながら、掬うように揉んでいく。

 伊沙羅が身悶えるたびにロープへと震えが伝わり、ステッキを通じて股間に振動が送り込まれる。

「あっちも二対一なら大丈夫だろ。こっちはこっちで楽しませてもらうぜ」

 にやりと笑った浦賀は、またステッキを揺すり始めた。そのたびに反応してしまう伊沙羅を、楽し気に見つめながら。


「ちっ、当たらねぇ!」

 亀河が苛立ち紛れに振ったトンファーを蘭紗は左肩に掠らせるように躱し、反撃を叩き込もうとするが、猿冠者の拳が鳩尾へと迫っていた。

(しかし、これならぎりぎりで・・・っ!?)

 いきなり、剥き出しの腹部を刺された。そう思うほどの痛みが弾けた。それは、猿冠者の手に隠されていた物が原因だった。

 寸鉄。手の中に隠れるほどの大きさの、暗器と呼ばれる隠し武器だ。様々な種類があるが、猿冠者が隠していたのは握り棒から短い鉄杭が伸び、鉄杭の先端に丸い形状の鉄塊がつけられている物だった。

 届かない筈の攻撃に、蘭紗はダウンを喫していた。

「さすが猿冠者の旦那だ、一撃とはね」

 思わず拍手した亀河は、すぐに欲望の視線を蘭紗に向ける。

「それじゃ、浦賀の旦那を見習って、と」

 亀河は倒れている蘭紗の両手首を下のロープを使って拘束すると、仰向けの蘭紗に馬乗りとなる。

「やっぱりデケェおっぱいはいいよな、しっかりとした揉み応えがあるぜ」

 さっそく蘭紗のHカップバストを両手で揉みながら、亀河がにやける。その間、猿冠者は突っ立ったままだ。

「・・・その手を・・・放しなさい・・・!」

 痛みを我慢し、必死に声を絞り出した蘭紗だったが、それ以上のことはできなかった。

「おいおい、同じトンファー使いだ、仲良くしようぜ」

 亀河が蘭紗のトンファーを拾い、蘭紗の左胸をつつく。

「私のトンファーに、触らないで・・・!」

「最近の女子高生は、どいつもこいつも生意気な口を利きやがる」

 苛立ちの表情を見せる亀河だったが、何かを思いついたのか、唇を歪める。

「へへ、こういうのはどうだ?」

 蘭紗のトンファーを玩んでいた亀河だったが、そのトンファーを、衣装の隙間から蘭紗の谷間に突き刺す。

「自分の武器で責められる、ってのも乙だろ?」

 蘭紗のHカップの谷間で蘭紗自身のトンファーを上下させながら、亀河がにやつく。更にはトンファーから手を放し、蘭紗の谷間に差した状態で、蘭紗の両胸を真ん中に寄せるように揉みだす。

「この、変態・・・!」

 蘭紗は信じられなかった。愛用の武器と言うのは、武術を修める者にとって大切な物である筈だ。それを、他人の武器とは言えこのような辱めに使うとは!

「なんだ、パイズリは嫌いか? なら・・・」

 亀河は谷間から引き抜いたトンファーの下側を持ち、取っ手の部分を蘭紗の秘部へと当てる。

「大事なところをマッサージしてやるよ」

 亀河は蘭紗の左太ももに座り、右膝を押さえ、トンファーを上下させる。

「な、なんてことを! あっ?」

 更に猿冠者がチア衣装の胸元に手を入れ、左胸を揉んでくる。

(な、なんという破廉恥なことを!)

 胸を、秘部を、男たちの好きなようにされる。レフェリーが行ったボディチェックと言い、男たちの厭らしさに反吐が出そうだ。

 しかし、男二人掛かりの責めが、蘭紗の身体を少しずつ変えていく。

(こ、これは・・・)

 義弟を思いながら過ごす夜。そのときに生じた衝動に似たものが、蘭紗の身体を侵食していく。

 それが何かを知らぬまま、蘭紗は翻弄されていた。


「不良の姉ちゃん、前回はかなりイカされたんだって?」

「うぅぅっ!」

 伊沙羅は未だに浦賀の責めを受け続けていた。胸を揉まれ、ステッキで秘部に振動を送り込まれる。

「今回は頑張るじゃねぇか。ええおい」

「あふぅっ!」

 ここまで浦賀に責められながらも、伊沙羅は一度も達していない。

 それは、意地だった。蘭紗の前で、達してなどなるものか、という意地。その意地を貫くため、伊沙羅は唇を噛みしめた。


「どうしたよおっぱい姉ちゃん、少しは気持ち良くなってきたか?」

「だ、誰が・・・んんんっ!」

 亀河の言葉を否定したものの、蘭紗は自らを苛む快楽に戸惑っていた。

「へっ、言ったそばから感じてやがる」

 下着の上から秘部を弄りながら、亀河が嘲る。猿冠者もまだ蘭紗の胸を揉み続けている。

「姉も姉なら弟も弟だな。厭らしい姉貴に弱虫の弟。お前の弟も情けねぇよな、いっつもお姉ちゃんたちに守ってもらってな!」

「・・・なんですって?」

 亀河の言葉に、心の奥底で何かが動く。今、この男は誰を馬鹿にした? 蘭紗の愛する義弟を、侮辱した!

「おおぉっ!」

 咆哮と共に無理やりロープから両手を引き抜き、猿冠者の後頭部に肘を落とす。即座にロープを掴み、そこを支点に亀河を蹴り飛ばす。

 男たちを跳ね飛ばした蘭紗は、自分のトンファーと亀河のトンファーを両手に構える。

「あの子を馬鹿にしていいのは・・・姉の私だけよ!」

 二本のトンファーが幾筋もの軌道を描き、亀河を叩きのめしていく。更に左手のトンファーが翻り、短い旋回で亀河の顎を打ち抜く。亀河の膝が崩れ、リングへと突っ伏す。それを確認もせず、蘭紗は猿冠者へと相対する。

 後頭部を擦りながら膝立ちとなっていた猿冠者だったが、蘭紗が構えたのを見てゆらりと立ち上がる。

(奇妙な動きに惑わされては駄目よ。自分の実力を信じて、行く!)

 蘭紗は二丁のトンファーを構えたまま、じりり、と前に出た。


「あいつら、油断しやがって」

 舌打ちした浦賀が竹刀を拾い、蘭紗へと向かおうとする。その瞬間、項垂れていた筈の伊沙羅の目が光った。ロープから両手を引き抜き、ステッキを掴み様、浦賀の後頭部目がけて振り抜く。

「ちぃっ!」

 しかし、浦賀は背後からの一撃を躱して見せた。それどころか即座に竹刀の一閃が伊沙羅に迫る。

「くっ」

 伊沙羅も危うく躱し、ステッキを構える。試合直後の強烈な打撃と、磔にされてからの責めが伊沙羅の体力を奪っている。しかし、伊沙羅の体力が万全であっても浦賀に勝てたかどうか。

 弱気になりかけた心を引き締め、伊沙羅はステッキで杖術の構えを取る。ステッキの下側三分の一と一番下を軽く持ち、切っ先を浦賀に向ける。

「ふん、少しは齧ったようだが、精髄してる、ってわけじゃなさそうだな」

 対する浦賀は、伊沙羅の実力を計る。

 格闘に天賦の才を見せるレディースの女傑と、身を持ち崩しながらも剣の実力で以て裏社会を生きる男。

 男女の間で闘気が渦巻いていく。

 先に動いたのは伊沙羅だった。

「はっ!」

 気合いと共に、扱くような杖術の突き。しかし簡単に浦賀に弾かれる。ならばと即座にステッキを旋回させる振り打ち。しかしこれも即座に弾かれる。

「おらぁ!」

「っ!?」

 浦賀の反撃は、伊沙羅の胸への突きだった。しかも充分に手加減された強さで、伊沙羅の胸が揺れるくらいの力だ。

 才能の量、と言うものがあれば、伊沙羅に軍配が上がっただろう。伊沙羅は才能故に様々な武術を体験し、自らのものとしてきた。

 しかし、こと熟練度という物差しで見たとき、剣のみに打ち込んできた浦賀に及ぶべくもない。

 伊沙羅の杖術の実力では、浦賀に抗しえない。伊沙羅は冷静に彼我の戦力差を計算する。まだ浦賀には遊ぶだけの余裕がある。ならば今は、その余裕の中にある隙を探る。

 そう決め、伊沙羅はステッキを握り直した。


「はぁぁぁっ!」

 蘭紗の二丁トンファーが唸りを上げ、猿冠者へと肉薄する。しかし猿冠者も驚異の反射神経で以て、悉く躱してみせる。

(強い・・・!)

 見た目で判断してはいけないほど、猿冠者の実力は高い。一旦間合いを離した蘭紗は、しっかりと構え直す。

「・・・スゥゥゥ・・・コッ!」

 左足を前に出したままの構えから、特殊な呼吸法で精神を静め、一気に前に出る。

 左手に握ったトンファーを突き出し、猿冠者の腹部を狙う。猿冠者も横に躱していくが、蘭紗はトンファーを旋回させる。

「っ!?」

 ぎりぎり躱した筈の一撃が、猿冠者を捉えていた。猿冠者のよろめきは一瞬だったが、蘭紗にはそれで充分だった。

「シィィッ!」

 至近距離からのトンファーの連打。玉堂、鳩尾、顎。正中線に並ぶ急所へとトンファーを叩き込むと、猿冠者の体が崩れ落ちた。


 猿冠者の間合いを誤らせたのは、蘭紗の技法だった。それは「猫足立ち」。

 猫足立ちとは、前足の踵を浮かす構えのことで、中国拳法や琉球の流れを汲む武術に見られる。蘭紗は猫足立ちで猿冠者に足の位置を錯覚させ、間合いを見誤らせ、急所へと一撃を加えることができたのだ。


「栄面さん!」

 もう猿冠者など見もせず、浦賀と対峙する伊沙羅の援護に向かう。

「ちっ、俺一人に働かせるかよ!」

 舌打ちした浦賀は、蘭紗へと大振りの一撃を放つ。余裕を持ってトンファーで受けた蘭紗だったが、重い一撃に跳ね飛ばされていた。

(なんという膂力!)

 幸い追い打ちは来なかった。伊沙羅の牽制に、浦賀が反応したためだ。蘭紗は痺れが奔った右手を振り、トンファーを握り直す。

「っ!」

 その短い間に、伊沙羅が追い込まれていた。浦賀は伊沙羅が敵わない相手だ、と言うことだ。当然蘭紗も敵わないだろう。

(・・・でも、二人で立ち向かえば?)

 今は伊沙羅への感情を棚上げし、勝利のために行動すべきだ。

「おおおおっ!」

 気合いの声で迷いを振り払い、浦賀に打ち掛かる。

「蘭紗さん、合わせます!」

 伊沙羅の意図を汲み、蘭紗は浦賀の腹部へと攻撃を集中させる。伊沙羅は浦賀の頭部と足元へと攻撃を散らし、狙いを絞らせない。

「こいつら、即席タッグのくせに!」

 前後からの息の合った挟み撃ちに、浦賀も焦りの色を見せる。それでも竹刀一本と体捌きで凌ぐのが、恐ろしいほどの浦賀の実力だった。

(ならば!)

 一瞬で次の行動を弾き出し、蘭紗は大きな動作での上段回し蹴りを放つ。当然ミニスカートが翻り、下着が丸見えとなる。男の悲しい本能で、つい浦賀は視線を惹きつけられていた。

「はあぁっ!」

「せいやぁぁっ!」

 伊沙羅のステッキでの捩じり突きが、蘭紗のトンファーでの双手突きが、浦賀の後頭部と腹部へと同時に突き刺さる。さすがの浦賀とは言え、リングに倒れ伏した。慌ててレフェリーが両手を交差し、試合を止める。


<カンカンカン!>


 美少女二人の勝利を、ゴングが告げる。

「・・・ふうぅぅ・・・っ」

 蘭紗はロープにもたれ、大きく息を吐く。ここまで苦戦し、身体を玩具にされるとは考えていなかった。しかし、勝利を挙げることができた。それは、伊沙羅の協力があったからだ。

 蘭紗は一つ頷き、こちらもロープにもたれている伊沙羅へと歩み寄る。

「どうしました?」

 ロープから身を離した伊沙羅の問いかけに、小さく息を吸う。

「・・・礼を言ったほうが、良いかな・・・と、考えまして」

 素直には言えない自分が歯痒い。

「まあ、一応ね・・・栄面さん、ありがとう」

「はい、どうも♪」

 伊沙羅が笑顔を見せる。今日初めて見た伊沙羅の笑顔に、思わず尋ねていた。

「でも、なぜ参戦を? 別に要請など無視しても良かったのでは?」

 蘭紗は疑問だった。義弟を救ってくれた、というのはわかった。しかし、何故ここまで蘭紗のために協力してくれたのか、それがわからない。

「それは・・・」

 伊沙羅が言いよどむ。蘭紗は伊沙羅の言葉の続きをじっと待つ。

 そのときだった。

「栄面さん!」

「っ!?」

 伊沙羅の背後から、白い忍者装束の男が襲い掛かったのだ。伊沙羅に警告を発した蘭紗だったが、自らもまた背後からの攻撃に倒れ込んでしまう。

「よし、追加試合の開始だ!」

 レフェリーが再びゴングを要請する。


<カーン!>


 蘭紗と伊沙羅の同意もないまま、更なるバトルロイヤルが始められてしまった。

「只今リングに上がったのは、小四郎選手、マンハッタンブラザーズ1号選手、マンハッタンブラザーズ2号選手の三名です!」

 いきなり始まった追加試合に、観客席も盛り上がる。不意打ちを受けた蘭紗と伊沙羅は倒れたまま、男たちに圧し掛かられる。

「久しいな、女不良」

 前回の試合で伊沙羅に肘を折られた小四郎は、怒りを込めて伊沙羅の両胸を握り込む。

「あうっ!」

「痛いか? だがな、肘が折れた痛みはこんなものではないぞ!」

「おい小四郎、やり過ぎるなよ」

 自分は伊沙羅の秘部を弄りながら、レフェリーが小四郎を制止する。

「・・・そうよな、今日は色責めでたっぷりと感じさせねばなるまい」

 そう言うなり、小四郎はバニースーツの胸元を掴んで引き摺り下ろし、伊沙羅の乳房を剥き出しにする。

「この前は触ることすらできなかった故な」

 小四郎は伊沙羅の乳房をじっくりと視姦すると、今度はゆっくりと揉み始める。

「よし、マンハッタンブラザーズは、阿礼選手をリング下に連れて行ってくれ。お客さんへのサービスだ」

 レフェリーの指示により、蘭紗はマンハッタンブラザーズの二人にリング下へと引き摺り下ろされた。

(ま、また、こんなことを・・・!)

 どうにか抵抗しようとするが、今までの消耗と、試合が終わったという安堵感で一度気が抜けた状態となり、力が入らない。

 マンハッタンブラザーズは蘭紗へと左右からダブルのコブラツイストを掛け、それぞれ片手で蘭紗の胸を揉んでくる。たちまち飛んでくる野次や視線に、蘭紗は唇を噛んだ。


「どうした? 息が荒いぞ」

 小四郎の揶揄に、伊沙羅は敢えて笑ってみせる。

「激しい試合をしたばかりですので」

「ふん、ならば、乳首がもう硬くなっているのは何故だ?」

「先程散々触られましたので、仕方ありませんね」

 お前たちには屈しない、という決意で以て、軽口を叩いて見せる。それが気に食わないのか、小四郎が更に激しく乳房を揉んでくる。

 それを伊沙羅はじっと耐える。耐え続け、勝機を見出すために。

 そのときだった。

「ああ、くそ。本格的に楽しむ前に終わっちまった」

 リング下で気絶していた筈の亀河が、リングへと戻ってくる。

「美味しいところで復活してきたな」

 今まで観客の反応を見て、小四郎の好きにさせていたレフェリーが、伊沙羅へと手を伸ばしてくる。

「改めて宜しくな、不良姉ちゃん」

 亀河も下卑た笑みを浮かべ、伊沙羅の太ももを撫でてくる。伊沙羅を責める男が三人となった。


「や、やめなさい、こんな恥ずかしい格好・・・!」

 蘭紗は場外で、二人掛かりでのアルゼンチンバックブリーカーを極められていた。マンハッタンブラザーズの肩に乗せられて背中を攻められているだけではなく、開脚までも加えられているのだ。しかも秘部を観客席のほうに向けられているため、ショーツが丸見えとなっている。

 蘭紗が幾ら叫ぼうとも、マンハッタンブラザーズが技を解くわけもない。蘭紗は、痛みと羞恥に呻くしかできなかった。


「くっ、うっ、くぅぅっ・・・」

 男たちの手が、伊沙羅の身体を弄(まさぐ)る。レフェリーが伊沙羅の左乳房を、小四郎が右乳房を、亀河が秘部を弄る。伊沙羅はほとんど抵抗らしい抵抗もできず、声を必死に堪えている。

「レディースもこうなりゃ可愛いもんだな」

 伊沙羅の反応に気を良くした亀河は、伊沙羅の腰を抱え、自分の腰を密着させる。そして衣装の上からとは言え、ゆっくりと腰を振り始める。

「<地下闘艶場>だと、本番なしってのが残念だぜ」

「おい亀河、今の発言は『御前』に伝えておくぞ」

「ま、待ってくれよ、ただの愚痴じゃねぇかよ!」

「あんまりふざけたことは言わないことだな」

 男たちの言葉でのじゃれ合いに、伊沙羅は唇を噛む。怒り、羞恥、屈辱。自分の身体が男たちの玩具にされていることが、伊沙羅のプライドを傷つける。

 疑似的な正常位で責められながら、伊沙羅は声を堪えていた。


 蘭紗はアルゼンチンバックブリーカーを極められたまま、女体の神輿よろしくリングの周囲を一周させられていた。そのたびにショーツを凝視され、野次や指笛を浴びせられる。

「ううっ、いい加減に、やめなさい・・・!」

 男性プロレスラー二人の拘束を振り解く力など残っているわけもなく、蘭紗は呻くしかできない。

「あっ、このっ!」

 更に、マンハッタンブラザーズはフックに使っていた両手を、蘭紗の胸と秘部を弄ることに使いだしたのだ。見事にシンクロした二人の手は、まるで四本腕の怪物が責めているようだ。

「は、放して、触らないで!」

 フックが甘くなったことでマンハッタンブラザーズの手を引き剥がそうとするが、相手は四本、蘭紗は二本。常にマンハッタンブラザーズの二本の手が蘭紗を責めてくる。

 蘭紗がマンハッタンブラザーズに玩ばれているところに、レフェリーが声を掛ける。

「マンハッタンブラザーズ、阿礼選手をリングに戻してくれ」

 レフェリーの指示で、セクハラを一旦やめたマンハッタンブラザーズの二人が、蘭紗をリングへと転がし入れる。

 そのとき、蘭紗と伊沙羅の視線が絡んだ。伊沙羅のアイコンタクト。伊沙羅の意図を読み、微かに頷く。

 蘭紗に遅れて、マンハッタンブラザーズもリングに上がろうとする。立ち上がろうとする蘭紗へと、リング内の男たちから欲望の視線が飛んだ。

「・・・蘭紗さん!」

 そのときだった。伊沙羅が両膝を引きつけ、微妙に左右差をつけた両足で亀河を蹴り飛ばす。

「せぇいっ!」

 蘭紗の正拳突きが、半回転した亀河の鳩尾に突き刺さる。思わず膝を折った亀河の顎に、追撃の膝蹴りが叩き込まれる。亀河の背筋がぴんと伸び、リングへと倒れ込んだ。

 亀河を倒すことができたが、二人の抵抗もそこまでだった。蘭紗にはマンハッタンブラザーズの二人が、伊沙羅には小四郎が取りつき、ダブルバックドロップと裏投げを放ったのだ。

「あぐっ!」「うあっ!」

 後頭部をキャンパスへとぶつけられ、動きを止められてしまう。

「まだ諦めないとはな。もっと徹底的に追い込まないと駄目か」

 リングから降ろされた亀河を、ちらりと見やったレフェリーが呟く。それは、これまで以上の責めを行うという宣言に等しかった。

「マンハッタンブラザーズ、阿礼選手を楽しませてやってくれ。栄面選手は・・・」

「無論、拙者が楽しませてもらう」

 そう言った小四郎が伊沙羅をうつ伏せとし、伊沙羅の秘部が自分の股間に密着するような体勢となる。そして伊沙羅の両腕を引っ張るような形で持つと、そのまま立ち上がろうとする。

「むっ、少しきついか・・・」

 長身の伊沙羅を持ち上げるのが難しいのか、小四郎がふらつく。

「狙いはわかった。手伝ってやろう」

 レフェリーは伊沙羅の乳房へと手を伸ばし、揉みながら持ち上げる。これで、手押し車にも似た体位が完成した。

「そらそら、こいつはどうだ?」

 小四郎が腰を振り、硬くなった股間を衣装越しとは言え、伊沙羅の秘部へとぶつける。亀河に続いての疑似性交に、伊沙羅の屈辱感が増す。

「栄面選手、乳首が硬いままだぞ? やっぱり気持ち良いんだろう?」

 レフェリーがにやつきながら、伊沙羅の乳首を転がす。勿論乳房を揉みながらだ。伊沙羅は顔を背けるが、言い返すことはしない。体力の少ない今は、屈辱を耐えて回復を優先させる。それが現実的な伊沙羅の判断だった。

 しかし、色責めを不快に思わないわけではない。唇を噛みしめ、屈辱と厭わしさを堪える。

「では審判、後はこちらだけで楽しむとしよう」

「そうか、わかった」

 レフェリーは伊沙羅の両胸を一度揉みしだいた後、その手を放す。

 小四郎は伊沙羅の上半身をトップロープにもたれかけさせ、尚も腰を突き上げる。伊沙羅は唇を噛み、耐えるしかできなかった。


「え、栄面さ・・・うあぁっ!」

 蘭紗はまたも、マンハッタンブラザーズからの二人掛かりでの責めに喘がされてしまう。両手は背中に回され、仰向けで押さえつけられながら両胸を揉まれ、更には秘部までも弄られてしまう。

「なんだ阿礼選手、栄面選手が羨ましくなったのか?」

 レフェリーが蘭紗のチア衣装を捲り上げ、スポーツブラを露出させる。それだけでは終わらず、スポーツブラまでも捲り上げる。

「ああっ!」

 乳首までも晒された羞恥に、蘭紗は叫ぶ。

「これはまた・・・直接見ると、大きさが凄いな」

 レフェリーだけでなく、男たちの視線が蘭紗の乳房へと突き刺さる。96cmHカップを誇る蘭紗の乳房は、横たわっていてもつんと上を向き、その存在を示している。

「見、見ないでぇ!」

 蘭紗は必死に身を捩るが、そのたびにHカップの乳房がふるふると揺れる。

「見るなと言いながら、大きなおっぱいを揺らして男を誘うとは。阿礼選手も淫乱だな」

 表情を緩ませたまま、レフェリーが蘭紗のHカップバストを鷲掴みにする。

「やっぱりおっぱいは生で揉むと違うな。肉の詰まり具合が良くわかる」

(直接触られるなんて・・・!)

 義弟にならまだしも、厭らしい男たちに乳房を見られ、更に揉みしだかれている。その不快感と嫌悪感は並大抵のものではない。

「まったく、最近の女子高生は発育が良くて目の毒だな。まあ、今日はしっかりと揉みまくって、更に大きくなるように頑張るとしよう」

 訳の分からないことを宣いながら、レフェリーは蘭紗の両乳房の感触を堪能する。

「阿礼選手も、気持ち良くなっているだろう?」

「だ、誰がそんなこと・・・んんっ!」

 否定しようとした蘭紗だったが、レフェリーから乳首を転がされることで遮られる。

「それじゃあ、なぜ乳首が硬くなっているんだ?」

「そ、それは・・・」

 蘭紗は、伊沙羅のように受け流すことができない。

「なんだ、答えられないのか? なら・・・」

「ひっ!」

 レフェリーがいきなり左の乳首に吸いつく。しかも乳首を吸い上げながら、舌で舐め回してくる。

「ああっ、いやっ、やめて!」

 蘭紗は必死に暴れるが、マンハッタンブラザーズの二人に押さえ込まれてしまう。

「ああ、こっちは嫌なのか? なら、反対の乳首を・・・」

「そんな意味じゃ・・・んんぅっ!」

 今度は右乳首に吸いつかれ、舐め回され、それだけで蘭紗は喘いでしまう。

「やっぱりこっちも硬くなっているぞ? 気持ち良いんだろう?」

「ち、違うわ、そんなわけが・・・」

「強情だな、阿礼選手は」

「あううぅっ!」

 レフェリーが両乳房を揉みながら、両乳首まで弄り回してくる。紛れもない官能の昂ぶりに、蘭紗は喘ぐしかできなかった。


「どうだ? 向こうは感じているようだぞ?」

 小四郎は未だに伊沙羅を疑似手押し車の体位で責めながら、伊沙羅の耳元で囁く。

「・・・」

「認めるのは嫌か? そうか、同じことをして欲しい、ということか」

 小四郎は伊沙羅の両手首を放し、両乳房を掴む。そのまま揉み立てながら、乳首を刺激していく。

「くぅぅ・・・っ!」

「ふん、声など我慢せずとも良いものを」

 小四郎は一層腰を強く叩きつけ、乳房を絞り上げ、一層縊りだされた乳首を扱き上げる。

「あふぅぅぅっ!」

「くくっ、良い声で鳴く」

 満足そうに呟いた小四郎の背に、レフェリーの声が飛ぶ。

「小四郎、栄面選手を連れてきてくれ」

「・・・了解した」

 不満混じりに頷いた小四郎が、伊沙羅を放り出すようにしてリングに下ろす。

「二人共、随分と乳首が硬くなってしまったじゃないか。どっちが硬くなったのか、お互いで確認してくれ」

 レフェリーの合図で、美少女二人は膝立ちの体勢にさせられ、剥き出しとされた乳房を押しつけられる。大きさの勝る蘭紗の乳房が、伊沙羅の乳房を包み込む。

 そこに、マンハッタンブラザーズが背後から二人の乳房を掴む。そして、美少女二人の乳首を擦り合わせる。

「ふああっ!」「くぅっ」

 その刺激に、二人の口から喘ぎ声が零れる。

「阿礼選手も栄面選手も、随分と気持ち良さそうじゃないか。もっと声を出してもいいんだぞ?」

 レフェリーは美少女二人のヒップを同時に揉み立て、言葉でも責める。

「声を抑えるなどと、無駄なことを」

 小四郎は二人の乳房の下側から掌をあてがい、弾ませるように持ち上げる。

 男四人から加えられる責めだったが、それでも美少女たちは絶頂だけは堪え、耐えた分だけ体力を消耗していく。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

「そうだ。さっき、なぜ栄面選手が参戦したのかと聞いていたな」

 息も絶え絶えな蘭紗に、レフェリーが話しかける。その間、何故か男たちの責めが止まった。

「阿礼選手、自分の本当の父親のことをどれだけ知っている?」

 いきなり父親のことを持ち出され、蘭紗は混乱する。伊沙羅に視線を向けると、伊沙羅は目を閉じていた。

「阿礼選手の父親は、モテ男もいいところでな。いや、種馬人生を送っている、と言ったほうが正確かな?」

 自分の実の父親のことを馬鹿にされ、蘭紗は思わずレフェリーを睨んでいた。

「阿礼選手の父親は、かなりの愛人を抱えていたんだよ。そして・・・」

 聞きたくない。その先は聞きたくない。

「その愛人の一人というのが、阿礼選手、お前の母親だ」

 まさか、という思いと、妙に納得した思いが湧く。

(でも、それでは栄面さんが参戦した理由にはならないわ)

 蘭紗の内心の疑問に答えるように、レフェリーが続ける。

「それに、栄面選手の母親も、阿礼選手の父親の愛人だったんだよ。まあ、二人共既に捨てられているのが哀れだが」

 蘭紗はその事実が信じられなかった。レフェリーの言うことが真実ならば、蘭紗と伊沙羅は・・・

「つまり、阿礼選手と栄面選手は、異母姉妹、と言うことになるな」

 その事実がもたらした衝撃に、蘭紗は言葉を発することができなかった。伊沙羅が、自分の姉妹・・・? しかし、それならば、試合中に感じた共感や共鳴にも納得できてしまう。初めて会ったというのに、何故か伊沙羅の動きや狙いがわかったのだ。

「栄面選手も最初は、阿礼選手と異母姉妹だ、というのは知らなかったらしい。母親本人も亡くなっているからな」

(そんな・・・)

 蘭紗にはまだ母親が居る。義理とは言え、父親と愛する弟も居る。しかし、伊沙羅は・・・

「その寂しさから、レディースに入った、ということかな?」

 レフェリーの問いかけにも、伊沙羅は何も返さない。

「まあそれは良い。今回の調査で、二人が異母姉妹だ、という事実が判明した。こちらのお節介で栄面選手に伝えたら、初めて存在を知った妹を助けるために、今回の要請を受けたんだよ」

 いきなり知らされた実の父親の本性と、異母姉妹の存在。混乱する蘭紗に、更なる追い打ちが掛けられる。

「では阿礼選手が納得したところで、姉妹仲良く楽しんでもらおうか・・・いや、待て」

 その言葉を合図に、再び責めが開始される。否、何故かレフェリーが他の男性選手を止めた。

「良いことを思いついたよ。最初の試合では負けてしまった阿礼選手に、今度は勝たせてあげるとしようか」

 レフェリーの合図で、伊沙羅が仰向けに寝かされる。それだけではなく、尻を上に持ち上げられ、大きく足を開かせられるという、俗に言う「まんぐり返し」の姿勢にさせられる。

 小四郎が足を押さえ、逃げられないようにする。

「よし、阿礼選手を上に乗せろ」

 マンハッタンブラザーズが蘭紗を開脚の姿勢で抱え、伊沙羅の上に乗せる。蘭紗と伊沙羅の秘部が重なるようにだ。

(こんな勝ち方を、望んだわけじゃないのよ・・・!)

 蘭紗は必死に身を捩る。伊沙羅も同様に逃れようとしているが、消耗しきった身体はうまく動いてくれない。しかも下手に動くとお互いの秘部を刺激してしまい、動きが小さくなってしまう。

「ワン、ツー、スリー!」

 レフェリーが速いカウントを取り、伊沙羅の失格が決まった。

「良かったなぁ、阿礼選手。栄面選手に勝つことができて」

 レフェリーがわざとらしく拍手する。

「敗北した選手に、衣装はいらないな」

「うむ、確かに」

 レフェリーと小四郎が、伊沙羅の衣装に手を掛ける。

 手始めとばかりに、燕尾服を剥ぎ取っていく。勿論燕尾服を脱がすだけでは終わらず、既に胸元をずらしていたバニースーツも脱がしていく。

 その間、蘭紗はマンハッタンブラザーズに胸を揉まれ、秘部を弄られている。

(栄面さんが・・・私のせいで・・・)

 タイツとアンダーショーツ一枚という姿にされてしまった伊沙羅に、蘭紗は唇を噛む。

「あぁっ! え、栄面さんに、新しい衣装を、んぅっ、着させてあげて!」

「新しい衣装? そんなものがある筈ないだろう?」

 レフェリーが馬鹿なことを、と笑う。

(それなら、せめて!)

 蘭紗はマンハッタンブラザーズの手を振り払い、伊沙羅を助けようとする。

「どこに行こうとしている?」

 しかしその足取りは悲しいくらいに遅く、小四郎に押さえつけられ、秘部を弄られる。

「え、栄面さん・・・!」

 伊沙羅を助けようにも、自分が捕らわれてはできる筈もない。しかも敏感な箇所を責められると、力が抜けてしまう。

 悔しさに唇を噛む蘭紗に、レフェリーが近寄ってくる。それと入れ替わりに、マンハッタンブラザーズが伊沙羅へと責めを開始する。

「新しい衣装はないが・・・他の衣装で良ければ、ここにあるじゃないか」

 レフェリーが、蘭紗のチア衣装のスカートを掴み、ひらつかせる。

「ああ、嫌なら別に良いんだ。栄面選手が素っ裸になるだけだからな。前回も素っ裸になっているんだから、問題ないさ」

 蘭紗の右胸を揉みながら、レフェリーが笑う。

「私はどうなっても構いません、蘭紗さん、気にせず闘ってください!」

「だそうだ。マンハッタンブラザーズ、栄面選手をもっと感じさせてやれ」

「あっ、ああっ、くぅぅ・・・っ!」

 途端に伊沙羅の喘ぎ声が聞こえてくる。

(栄面さんは、私を・・・ほとんど面識もなかった私を、助けようとしてくれたわ)

 伊沙羅が参戦してくれなければ、どうなっていたか。この<地下闘艶場>で、卑怯な手段を採られ、もっと酷い目に合っていただろう。

 ならば、今度は蘭紗が身体を張る番だ。

「・・・わかったわ」

 男たちの手を払い、レフェリーを睨む。

「そうか、お願いがあるなら聞こうか?」

 レフェリーに促され、蘭紗は疲労を堪えて立ち上がる。

「服を栄面さんにあげるから・・・」

「言葉遣いがなっていないなぁ、阿礼選手。いいとこの学校に行っているんだから、もう少し頭を使ったらどうだ?」

 レフェリーの揶揄に、蘭紗は唇を噛む。

「お、お願いですから、その・・・」

「蘭紗さん、その先は言わないで・・・はぁん!」

 マンハッタンブラザーズから両乳首を転がされ、伊沙羅が喘ぐ。

「ふ、服を脱ぐから、栄面さんに・・・」

「そんなお願いは聞けないね」

 恥ずかしさを振り払って口にしたお願いも、レフェリーに拒絶されてしまう。そうしている間にも、伊沙羅は半裸のまま嬲られている。

「お、お願いですから・・・わ、私のユニフォームとスカートを脱がせて・・・栄面さんに、渡してください・・・」

 覚悟を決めた筈なのに、小さな声しか出ない。

「うん? 何だって? まさか、無料(ただ)でお願いを聞けと言うのか?」

 レフェリーがわざとらしく聞き返してくる。その態度に対する苛立ちが、蘭紗に声を上げさせる。

「わ、私にセクハラしてもいいですから! 脱がせてください! スポーツブラとショーツだけにしてください! 私のせいで酷い目に合っている伊沙羅姉さんに、服を着させてあげてください!!」

 蘭紗の「お願い」に、観客から盛大な野次が飛ばされる。

「そうかそうか、お願いされたら仕方がないなぁ」

「うむ、脱がせて欲しいと頼まれれば、応じぬわけにはいくまい」

 レフェリーと小四郎が頷きあい、蘭紗の身体に手を伸ばす。

「俺はスカートを脱がそう」

「では、拙者は上を」

 レフェリーは蘭紗の秘部を弄りながら、スカートのホックを外す。小四郎は蘭紗の左胸を揉みながら、チア衣装の上着の裾を持つ。

「うむ、上手く脱がせぬな。両手を上げてもらおうか」

 小四郎の言葉に、蘭紗はその通りにする。しかし小四郎は蘭紗の両胸を揉み始め、一向に脱がそうとしない。

「は、早く脱がせて」

「厭らしいおなごよな。そんなに早く半裸となりたいか?」

「安心しろ、こっちはもう脱がしたからな」

 レフェリーは蘭紗のヒップと秘部を同時に触りながら、一人にやつく。

「そ、そんなつもりは・・・!」

「まあ待て、胸の大きさを測っておかねば、途中で引っかかってしまうかもしれぬのでな」

 勝手な理屈を捏ねながら、小四郎は蘭紗の両胸を揉み込む。

(我慢しないと・・・栄面さんだって、我慢しているんだから・・・)

 蘭紗は奥歯を噛みしめ、屈辱を耐える。

「このままでは、脱がすことはできぬな」

「えっ・・・んんっ」

 小四郎がチア衣装の裾を蘭紗の乳首に当て、上下に動かして刺激する。

「ほれ見よ、胸の中心が硬くなり、引っ掛かっているぞ」

 脱がそうと思えば脱がせるくせに、小四郎がわざとらしく乳首を弄り、立ち上がっている事実を突きつける。

「そ、それは・・・」

「理由をしかと言うならば、脱がせてやっても良いが?」

 小四郎はチア衣装から手を放し、服の上から乳首を刺激してくる。

「ち、乳首が、硬くなったのは・・・」

 その先を言おうとしても、恥ずかしさから詰まってしまう。その間にも乳首は弄られ、ヒップを揉まれ、秘部を弄られている。

「どうした? まさか、こうして触られ続けるのが良いと言うことか? ああ、手は下ろさぬようにな」

 小四郎は蘭紗の両胸を揉み立てながら、蘭紗に屈辱の言葉を強いる。

(言わないと、いつまでも終わらないわ。仕方ない・・・)

「んんっ・・・それは、ずっと触られ続けたから、です・・・」

「それだけで硬くなるわけがないな」

 ようやく絞り出した言葉も、あっさりと否定される。

「気持ち良くなったからではないのか? 正しく言わねば、服を脱がしてはやらぬぞ」

 小四郎が居丈高に命じてくる。

(・・・こんな恥ずかしいことを、言わないといけないなんて・・・)

 あまりの羞恥に、蘭紗は唇を噛む。しかしその間にも胸を揉まれ、乳首を弄られ、秘部とヒップを好き勝手に触られている。

 蘭紗は覚悟を決めた。

「わ、私の乳首が硬くなったのは・・・気持ち良くなってしまったから、です・・・」

 リングの上で、美少女から背後から胸を揉まれ、秘部を弄られ、卑猥な宣言をさせられる姿に、観客席からの野次が一際大きくなる。

「さっさと認めておけば良いものを」

 小四郎は未だに蘭紗の両胸を揉みながら、鼻で笑う。

「くぅっ、は、早く・・・」

「早く下着姿になりたいのか? 阿礼選手は淫乱だな」

 蘭紗の秘部を弄りながら、レフェリーが笑う。

「正直に認めた故、脱がせて進ぜる」

 小四郎がゆっくりとチア衣装を捲り上げていく。

「凄いな、これだけで揺れるとは」

「あっ!」

 スポーツブラに包まれたHカップバストを、レフェリーが鷲掴みにする。当然のようにそのまま揉み上げてくる。更に、しっかりと立ち上がっている乳首まで弄り回してくる。

(ううっ、早く、早く脱がせて、こんなの、いやぁ・・・!)

 しかし、蘭紗は耐えるしかない。

 チア衣装は首まで持ち上げられ、鎖骨まで露わとなる。そこから更に持ち上げられ、視界が遮られる。

「ふあっ!」

 蘭紗が喘ぐ。そのタイミングでレフェリーがスポーツブラの中に手を入れ、またも直接乳房を揉みだしたのだ。更に立ち上がっている乳首も扱かれ、快感が奔る。視界が塞がれた中での不意打ちに、予想以上の快感となっていた。

「阿礼選手、やっぱり乳首が気持ち良いようだな。甘い声を出してくれるじゃないか」

 レフェリーがにたつきながら、蘭紗の両胸を好き勝手に弄る。蘭紗はぎゅっと唇を結び、声を出すまいと耐える。

 ようやくチア衣装が頭を抜け、視界が回復する。しかし目に入ったのはレフェリーの顔で、余所を向く。

「肘を曲げよ。衣装が脱がせぬ」

「くうっ・・・」

 蘭紗は乳首から与えられる刺激を耐え、両肘を曲げてチア衣装を脱がしやすくする。その姿はまるで、自ら望んで胸を突き出し、自ら望んで胸を揉まれ、自ら望んで服を脱がされているようだ。

 それでも、ようやく小四郎がチア衣装の上着を脱がし終える。蘭紗は下着姿となった身体を両手で庇う。

「おいおい、脱がせてもらってお礼もないのか?」

 レフェリーの請求に、蘭紗の表情が変わる。しかしぐっと堪え、頭を下げる。

「ぬ、脱がせてくれて、ありがとう、ございます・・・」

 怒りで何度もつっかえる。

「なに、阿礼選手の頼みだからな、気にしなくても良い」

 蘭紗に近づいたレフェリーが、蘭紗のヒップを撫でる。

「それに、これから・・・」

 小四郎が右胸を掴んでくる。

「栄面さん!」

 蘭紗はレフェリーと小四郎の手を払いながらチア衣装を奪い、伊沙羅へと近づく。

「おっと待った、何か不正をされても困るからな、衣装はこっちに貰おう」

 背後からレフェリーが蘭紗の左胸を掴む。

「さ、衣装を」

「・・・」

 蘭紗は左胸を揉んでくるレフェリーの手を押し退け、その手に先程まで自分が着ていたチア衣装の上下を乗せる。その衣装を、レフェリーはマンハッタンブラザーズに差し出す。

「マンハッタンブラザーズ、阿礼選手のご要望だ。栄面選手に、阿礼選手脱ぎ立ての衣装を着させてやってくれ」

「・・・自分で、着ますわ」

 伊沙羅は快感で弱った身体に喝を入れ、無理やり立ち上がる。そしてマンハッタンブラザーズから衣装を受け取り、蘭紗の体温がまだ残ったそれを、悲しい気持ちで身に着けていく。

「栄面選手は脱落したからな、リングの下に行ってもらおうか」

 レフェリーの指示で、マンハッタンブラザーズが伊沙羅を抱え上げる。

「くっ」

 反射的に、マンハッタンブラザーズ1号の顔面に肘を入れる。今まで多くの男たちを倒してきた一撃も、今の体力では怯ませるくらいしかできなかった。

「あっ!?」

 しかも、マンハッタンブラザーズ2号の投げでリングに叩きつけられる。反射的に受け身は取ったものの、マンハッタンブラザーズ1号のセントーンが落ちてくる。

「うぐぅっ!」

 成人男性の体重をすべて浴びせられ、衝撃に動きが止まる。

「さすがにもう抵抗は難しいようだな。マンハッタンブラザーズ、しばらく栄面選手と遊んでいてくれ。なんなら・・・」

 レフェリーの目配せに、同時に頷いたマンハッタンブラザーズは、伊沙羅をリング下へと引き摺り下ろした。

「それじゃ阿礼選手には、勝利を手伝ったお礼に、その身体で遊ばせてもらおうか」

 リングへと横たえられた蘭紗に、レフェリーと小四郎が覆い被さる。

「それとこれとは・・・んんんっ!」

 もう押し退ける力も出ず、下着姿の蘭紗は声を我慢するくらいしかできなかった。


「んっ、くぅっ・・・!」

 リング下で、押し殺した声が洩れる。伊沙羅は、観客の手によるセクハラを受けさせられていた。リング下に下ろされても抵抗をしたため、マンハッタンブラザーズから観客席へと放り込まれたのだ。

 たちまちチア衣装の中にまで手が潜り込み、乳房、乳首、脇腹、臍など、様々な箇所を摘み、撫で、揉んでくる。

 一本の手がアンダーショーツの中にまで潜り込み、秘裂と淫核を同時に弄る。

「んんんんっ・・・!」

 その間にも項を舐められ、乳房を揉まれ、乳首を転がされ、尻肉を揉まれ、太ももを撫でられている。しかしチア衣装が脱がされることはない。

 望まぬ快感が伊沙羅を襲い続けるが、絶頂だけは必死に耐える。異母妹である蘭紗の前で達したくなかった。


「さあ阿礼選手、さっきの続きと行こうか」

 蘭紗の左胸を揉みながら、レフェリーが厭らしい笑いを浮かべる。

「下着姿になってしまったなぁ、阿礼選手」

 レフェリーは蘭紗の秘部を弄りながら、一人にやつく。

「くっ・・・」

 悔しさと腹立たしさに、蘭紗は唇を噛む。

「そして、これで終わりだと思っていないよな?」

 レフェリーはスポーツブラの中に右手を突っ込み、直接左乳房を揉む。

「それは、どういう・・・」

「まずは、こうだ」

 小四郎が背後からブラをずらし、Hカップの乳房を剥き出しにする。

「こうして見ると、やはりデカいな。榊選手以上かもな」

 伊沙羅が<地下闘艶場>に参戦する要因となった榊式壬の名を出し、レフェリーが喜ぶ。

「見ているだけ、というのも勿体なかろう」

 小四郎が背後から乳房を揉み始める。

「それもそうだ」

 レフェリーは乳房の真ん中で揺れ動く乳首を摘み、振動を加えていく。

「はううっ!」

 敏感な乳首への責めに、蘭紗は喘ぎ声を洩らした。


「はぁ・・・はぁ・・・ううぅっ・・・」

 伊沙羅は、ようやく観客たちの責めから解放されていた。しかし、それは責め手がマンハッタンブラザーズに変わっただけであり、色責めが終わったわけではない。

 衣装の中に手を入れられ、乳房を、乳首を、秘部を、双子ならではの同時責めに晒される。

 至近距離からは野次や指笛が飛ばされ、伊沙羅は屈辱から抜け出せずに居た。


「うぅっ、はぁぁ・・・」

「くくっ、乳首だけで随分と気持ち良くなったようだなぁ、阿礼選手」

「はぁん!」

 蘭紗の乳首をたっぷりと苛めたレフェリーは、今度は秘部責めを始める。

「い、いつまで、こんなことを・・・!」

「いつまで、と言われてもな。阿礼選手のほうから『セクハラしてください』とおねだりしてきたからなぁ」

 自分がそう言わせたのにも関わらず、レフェリーは蘭紗が望んだことだと嘲笑する。

「そして、そんな厭らしい阿礼選手には、こいつも脱いでもらおうか」

 レフェリーが、なんと最後の砦であるショーツを掴んだのだ。

「や、やめて! それだけはいやぁ!」

 蘭紗のあまりの剣幕に、レフェリーは眉を顰める。

「わかったわかった、脱がすのはやめよう」

 そう言って、蘭紗のショーツから手を放す。蘭紗もほっと気を抜いた、そのときだった。

「それ!」

「ああっ!」

 レフェリーがショーツを掴み、一気に引き摺り下ろしたのだ。

「ぬ、脱がさないと言ったばかりじゃないのよ!」

「ああ、完全には脱がさない。こうしてやろう」

 レフェリーはショーツを蘭紗の左足首から抜くと、右足首に巻きつける。

「そら、足首を隠してやったぞ」

「そ、それになんの意味が・・・ああぁっ!」

 剥き出しとなった秘部を弄られ、声が洩れる。

「なんだかんだと喚くくせに、しっかりと濡れているのは何故だろうなぁ?」

 愛液の存在を暴露し、レフェリーがにやつく。

 スポーツブラはずらされ、ショーツは右足首に巻きつけられ、蘭紗はほぼ全裸と変わらない。恥ずかしい格好で嬲られる蘭紗に、欲望の視線が突き刺さっていた。


「蘭紗さん・・・あふぅっ!」

 責められる蘭紗の姿を見せつけるように、伊沙羅はマンハッタンブラザーズに抱え上げられていた。両腕はマンハッタンブラザーズの肩に乗せられ、両脚は大きく開かされている。更に乳房を両側から揉まれ、乳首も転がされている。

 それでも伊沙羅は絶頂だけは堪え、達すまいと耐え続けていた。


「それじゃ、一つ確認といくか」

 レフェリーの合図に、小四郎が頷く。

 小四郎が蘭紗の頭を自分の股間に乗せ、蘭紗の両腕を自分の足で押さえつけ、蘭紗の両足首を自分の両手で掴む。何を狙っているのかは明らかだった。

「や、やめてぇ・・・!」

 下手に動くと、後頭部に当たる小四郎の股間が気になってしまう。そのため、蘭紗は上手く抵抗できない。

 そして、小四郎が腕に力を込めた。

「あああっ!」

 蘭紗の悲鳴を、歓声が打ち消す。美少女の大股開きに、野次や指笛が巻き起こる。

「さあ、阿礼選手。処女かどうか、この目で確認させてもらおうか」

 レフェリーが舌舐めずりをしながら、蘭紗の秘部へと手を伸ばす。

「いや、そんなこと・・・だめぇ・・・!」

 蘭紗の必死の制止も聞かず、レフェリーは秘裂を左右に開き、奥まで露わにさせる。

「やっぱり処女か。栄面選手と一緒だな」

 処女の証を確認し、レフェリーが鼻の下を伸ばす。

「どれ、それじゃ処女の味を・・・」

 レフェリーが蘭紗の秘裂へと舌を伸ばそうとした、そのときだった。

「お待ちください!」

 そこに、凛とした声が響く。マンハッタンブラザーズに嬲られながらも、未だ屈しない伊沙羅だった。

「どうしたんだ栄面選手? 聞くだけ聞こうじゃないか」

 レフェリーはマンハッタンブラザーズに指示を出し、伊沙羅を立たせる。その間も蘭紗の秘部を撫で続けている。

「私の・・・」

 そこで一旦伊沙羅は目を伏せる。しかし覚悟を決め、挑むような視線でレフェリーに言う。

「私のアンダーショーツを、蘭紗さんにお渡しします。蘭紗さんに着させてあげてください」

「ほう。栄面選手は、自分からアンダーショーツを脱いで、チア衣装の下には何も着けていないという厭らしい格好になりたい。そういうことかな?」

「・・・はい。そうです」

 レフェリーの言葉を否定せず、伊沙羅は頷く。否定したところで結果は変わらない。それならば、さっさと認めてしまったほうが早い。

「そうか。それなら、厭らしい栄面選手の、厭らしいお願いを叶えようじゃないか」

「ありがとうございます」

 感情は込めずに礼を言った伊沙羅は、ミニスカートの下のアンダーショーツに手を掛ける。

 伊沙羅が自分でアンダーショーツを脱いでいく。その光景に、観客たちの視線も釘付けになる。

 伊沙羅が片足ずつ抜き、アンダーショーツを手に持つ。

「それじゃ、そいつをもらおうか」

「・・・どうぞ」

 伊沙羅はレフェリーに、まだ温もりの残るアンダーショーツを手渡す。

「おいおい栄面選手、たっぷりと濡れているな。随分と感じてしまったようじゃないか」

 レフェリーの羞恥の言葉責めにも、伊沙羅は何も返さない。

「それじゃ、ちゃんと脱いだという証拠を見せてもらおうか」

「・・・どういう意味でしょうか?」

 レフェリーの意図が読めず、確認する。

「スカートを捲って、本当に何も穿いていない、というところを見せてくれ」

「なっ・・・」

 このレフェリーの指示に、さすがの伊沙羅も絶句する。

「嫌ならいいんだ、これは没収するだけだからな」

「・・・わかりました」

 羞恥を堪え、伊沙羅はチア衣装のミニスカートに手を掛ける。そのまま前を大きく捲り上げ、自ら秘部をレフェリーに見せつける。

「これで、良いでしょうか?」

「ああ、何も穿いていないな。愛液が太ももまで垂れているのも見えるよ」

 一度頷いたレフェリーが、更なる屈辱の指示を出す。

「それじゃ、お客さんにも確認してもらってくれ」

「・・・」

 無言で伊沙羅は観客席へと向き、再びスカートを持ち上げる。その途端、欲望の視線が伊沙羅の股間へと集中する。

「ああ、もちろんお客さん皆に見てもらってくれよ。スカートを捲ったまま、リングの周りを一周してくれ」

「っ・・・」

 伊沙羅は唇を噛むが、それでもレフェリーが命じた通りに、チア衣装のスカートを自らの手で捲ったまま、観客席に見せるように歩いていく。

 観客からは酷い野次や指笛、欲望に満ちた視線が飛ばされる。それでも伊沙羅はスカートを捲った姿で歩を進める。

「・・・これで、宜しいでしょうか」

 伊沙羅が屈辱の行進を終え、レフェリーが頷く。

「よし、良いだろう。このアンダーショーツは阿礼選手に穿いてもらおう」

 しかし、蘭紗は思わず叫んでいた。

「駄目よ、栄面さん! それは貴女が穿いて!」

「いえ、蘭紗さん、貴女が穿いてください」

 異母姉妹は、お互いを羞恥から守ろうと言い募る。

「困ったな、どっちも穿きたくないとはな」

 アンダーショーツを持ったまま、レフェリーが頭を掻く。

「それならこれは・・・こうしようか」

 そのまま、アンダーショーツを観客席へと投げ込んだ。たちまち争奪戦が始まる。

「・・・なんということを!」

 これには、伊沙羅も怒りを抑えきれなかった。怒りの衝動のまま、リングに上がろうとロープに手を掛ける。しかし、マンハッタンブラザーズがそれを許さない。

 マンハッタンブラザーズは伊沙羅の背後から両手両足を掴むと、回転させながら床へと叩きつけたのだ。

「がはっ!」

 リングとは違う硬い床に身体の前面から落とされた伊沙羅は、痛みに呻くしかできない。喧嘩と修練で鍛えた身体ではあっても、その衝撃は耐えきれるものではなかった。

「おいおい栄面選手、まさかとは思うが、今レフェリーに攻撃しようとしたのか?」

 レフェリーは蘭紗の両胸を揉みながら、伊沙羅に尋ねる。しかし伊沙羅は喋ることも厳しい。

「返事はなしか。マンハッタンブラザーズ」

 蘭紗の乳房から手を放し、エプロン側へと歩いてきたレフェリーの指示により、チア姿の伊沙羅は、両手首をロープに縛められ、観客席を向いて吊り下げられた状態にされてしまう。

「なあ栄面選手、どうなんだ?」

 レフェリーは背後からチア衣装を捲り上げ、伊沙羅の乳房を露出させる。そのまま両乳房を揉みながら、乳首を転がす。しかし床に胸を強打した伊沙羅は痛みに呻く。

「答えたくないなら、それでも良いがな」

 レフェリーは伊沙羅の返答の有無など気にせず、乳房を揉み上げ、乳首を扱く。

「お仕置きは受けてもらうぞ・・・次は、大股開きといこうか」

 頷いたマンハッタンブラザーズの二人が、伊沙羅の両足首を持つ。

 マンハッタンブラザーズが、伊沙羅の両足を持って大きく広げていく。伊沙羅は身をくねらせるが、それも儚い抵抗だった。

 伊沙羅の両足が開かれるにつれ、スカートが捲れていく。マンハッタンブラザーズは、伊沙羅の腰の位置で両足をロープにからめる。

 伊沙羅は大開脚を強いられ、アンダーショーツも脱いで隠す物のない秘部を、欲望の視線に晒されてしまう。全裸ではないものの、それが逆に見る者の興奮を誘う。

「どうだ、お客さんのすぐそばでアソコをじっくりと見られるのは?」

 乳房を揉んでいたレフェリーの手が、ゆっくりと下ろされていく。

 胸の谷間を通り、鳩尾を通過し、腹部を撫で、臍を擽り、恥骨を叩き、剥き出しの秘部へと辿り着く。

「恥ずかしいか? それとも・・・気持ち良いのか?」

 レフェリーが秘裂をゆっくりと弄りだす。数々のセクハラで既に濡れているそこを、丹念になぞり上げる。

「くっ、うぅっ・・・!」

 嬌声だけは上げまいと、伊沙羅は必死に唇を結ぶ。

「おいおい、この前はあれだけ気持ち良くなってくれたじゃないか。母親が違うとは言え、妹の前で格好をつけたいのか?」

「ああああっ!」

 レフェリーに秘裂と淫核までも同時に弄られ、伊沙羅が絶叫する。

「この前の試合のことを思い出せ」

 レフェリーの言葉が、呪詛めいて鼓膜を犯す。呪言は脳へと届き、屈辱の光景をフラッシュバックさせる。

「護覚の術に掛かり」

「ぁ・・・」

 ずくり、と下腹部の奥が疼く。

「火筒の剛毛で責められ」

「あっ、くぅあぁ・・・!」

 乳首が更に尖り、額から汗が噴き出る。

「チームのエンブレムを汚してしまった、あの試合を」

「あっ、あっ、あっ・・・!」

 忘れようと努力した。もう忘れたと思っていた。

「しっかりと思い出して、しっかりとイクんだ!」

 レフェリーの手が、指が、伊沙羅の乳房を、乳首を、淫核を、秘裂を、敏感な箇所を同時に責める。伊沙羅もレディースの意地で必死に耐えようとするが、<地下闘艶場>の空気が、淫虐の記憶が脳を埋めていく。

「そら、厭らしい姉の気持ち良くなる姿、よく見ておけ」

 小四郎は蘭紗をいたぶりながら、その顔を伊沙羅へと向けさせる。

「くっ・・・ふわぁっ!」

 顔を背けても、乳首を転がされると力が抜けてしまう。そのたびに伊沙羅へと顔を向けられ、閉じた瞼も無理やり開かれる。

「頑張るなぁ、栄面選手。だが、もう限界だろう? 前回は数えられないくらいにイッたんだ、身体が覚えている筈だぞ?」

 レフェリーの手が蠢くたび、勝手に腰が跳ねる。それでも伊沙羅は凄まじい精神力で耐えていく。

 それでも、限度はあった。身体も、心も、快楽へと塗り潰されていく。精神力だけでは支えきれず、官能が支配していく。

「意外と頑張るじゃないか。マンハッタンブラザーズ」

「ぅ・・・ぁぁ・・・っ!」

 レフェリーがマンハッタンブラザーズを呼び寄せ、同時に責めを行うように命令する。

 マンハッタンブラザーズが加わったことで、身動きできない伊沙羅を六本の手が責める。乳房を揉み回し、弾ませ、乳首を抓り、転がし、ヒップを揉み立て、叩き、淫核の包皮を剥き、つつき、秘裂を撫で、弄る。

 敏感な箇所を同時に責められ、伊沙羅の腰が勝手に跳ねる。口からは喘ぎ声が洩れ、唾液までも零れる。

 そして、限界が訪れた。

「あっ・・・はぁあ・・・あぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁっ・・・・っ!」

 今まで耐えに耐えてきただけ、恐ろしいほどの絶頂感が伊沙羅を襲う。全身から汗が噴き出し、乳首はこれ以上ないほどしこり立ち、淫核は包皮から頭を出し、秘裂からは愛液が迸った。

 叫ぶだけでも尚足りず、伊沙羅は頭を逸らせ、少しでも快感を逃そうとする。そのため、前髪が後ろへと流れ、額の傷が露わとなった。

「・・・ふん」

 その傷が目に入ったレフェリーは、伊沙羅への責めを止めた。

「小四郎、好きにしていいぞ。ただし・・・」

「ああ、もう加減は忘れぬよ」

 マンハッタンブラザーズがリングへと戻り、入れ替わりに小四郎がリング下へと降りる。

 小四郎は羞恥の開脚磔とされた伊沙羅の肢体を、じっくりと眺め回す。

「くくっ、その格好を見ると思い出すな。榊式壬も、最初の試合で同じような姿となったことをな」


 榊式壬が最初に<地下闘艶場>で闘った際、テニスルックの下に極小水着という衣装で試合をさせられている。テニスルックとチア衣装という違いはあるものの、似ていることに間違いない。


「チームの相棒と同じ格好にしてくれたんだ。母親の違う妹に感謝せねばな」

「・・・そうですね。貴方方のような下衆の責めを耐え、自らの衣装を渡してくれた蘭紗さんには感謝しかありません」

 荒い息を吐きながらの伊沙羅の皮肉に、小四郎の目が細められる。

「まだそんな口が叩けるか・・・今日は、徹底的に躾けてやる」

 そう宣言した小四郎は、その豊満なヒップを下から鷲掴みにする。

「随分と尻肉も実ったようだな」

 重量感のあるヒップを支えるようにして揉みしだきながら、小四郎が笑う。

「それに乳肉もな」

 左手でヒップを揉みながら、右手で左乳房を撫でる。前回の試合での淫虐を耐え抜き、その代償として、更に男心をそそるプロポーションとなった女体を愛でるように。

「肉づきは良いが、太っているわけではない。不思議な身体よな」

 小四郎が言う通り、伊沙羅はむっちりとした肢体をしている。しかし出るべきところはしっかりと出て、締まるところは締まっている。それが肉感的な魅力となって男を惹きつける。

「そして、ここだ。随分と感じやすい身体になったものよ」

 小四郎が、愛液に濡れそぼった秘裂を撫でる。それだけでは終わらず、秘裂を左右に開き、奥まで露わにする。

「ふん、女不良のくせに、未だ処女とはな」

 処女膜を確認した小四郎は、にたりと笑う。

「抵抗もできない女性の大事な部分を、無理やり覗くしかできないとは。哀れな忍者さんですわね」

 それでも伊沙羅の心は折れない。この反骨心に、小四郎の顔が強張る。

「・・・まだまだ余裕があるようだな。これから心折れるまで嬲り抜き、敗北の後では三日三晩責め抜いてやる」


 伊沙羅は今回の試合への参加条件として、敗北の際には<地下闘艶場>で飼われるという契約を交わしていた。そうなれば、嘗て榊式壬が落とされた状況に、否、より一層酷い状況に置かれるだろう。

 しかし、伊沙羅は異母妹である蘭紗を助けたかった。今までその存在を知らなかった肉親のために闘いたかった。

 だが、このまま敗北すれば、小四郎は伊沙羅に復讐を加えるだろう。その方法は考えたくもない。

 それでも、まだ蘭紗は敗北していない。試合が終わったわけではないのだ。


「では、今度は・・・」

 小四郎はエプロンに膝をつき、伊沙羅の尻を抱える。そのまま、自分の股間を伊沙羅の秘部へと密着させる。それからゆっくりと腰を動かし始めた。

「今度は直接アソコに当たっているぞ。気持ち良いだろう?」

「っ、っ、っ・・・・!」

 小四郎に何か言い返したい伊沙羅だったが、悔しいが小四郎の言う通りだった。直接秘裂を抉るように擦られ、紛れもない官能を味わわされていたのだ。

「どうした? 今度は何も言い返さないのか?」

「・・・別に。こんな、こと・・・っ」

「そろそろ余力すらなくなってきたようだな」

 小四郎が腰を振りながら、更に乳房を揉み、乳首を弄り回してくる。

「くあああっ!」

「ふん、気持ち良さそうな声が出だしたな」

 もう小四郎へ言い返すこともできず、伊沙羅は頭を振る。両手両足が縛められている以上、頭しか動かせないのだ。

 しかし、そんなことで快感をすべて逃すことなどできない。

「ふああああっ!」

 伊沙羅の声が跳ね上がる。小四郎が腰の角度を調整し、秘裂と淫核を同時に責められるようにしてきたのだ。一度達してしまった身体は快感を受け入れ、伊沙羅を裏切る。

「くくくっ、生で抱ける日が今から楽しみだぞ」

 伊沙羅たちが敗北した暁には犯してやると、小四郎が暗に伝える。それでも伊沙羅は何も返せない。快楽に屈した身体に抗うのに精一杯なのだ。

「左肘の礼だ、高らかに達してしまえ!」

「ああっ、駄目ですわ、こんな、こんな・・・」

 必死に首を振っていた伊沙羅の動きが止まる。

「あっ・・・」

 一瞬の静寂。そして。

「・・・あああーーーっはぁああああっうあああああぁぁぁぁぁ・・・っ!」

 長い絶叫を発した伊沙羅は、がくりと首を折った。


「ぅっ、ぅぅっ、ぅぁぁ・・・」

 リングに小さな声が広がる。蘭紗はほぼ全裸に等しい身体をマンハッタンブラザーズに押さえられ、しかも大きく開脚させられていた。その股間にはレフェリーが顔を埋め、秘裂を舐め回している。

 レフェリーの舌が秘裂を上下に往復する。かと思えば淫核をつつき回し、吸いつく。更にレフェリーは指で蘭紗の秘裂を開くと、処女膜までも舐めしゃぶる。

「ぁっ、ぁぅっ、ぅぅぅ・・・」

 蘭紗に抵抗できるだけの体力は残されておらず、例え体力が残っていたとしても、マンハッタンブラザーズを跳ね除けることは難しかっただろう。

「・・・ふぅ。処女のアソコは、何度味わってもいいもんだな」

 ようやくレフェリーが顔を上げ、自分の唾液と蘭紗の愛液でベトベトになった口元を拭う。その目は未だに蘭紗の剥き出しの秘裂へと注がれている。

 しかしレフェリーは視線を剥がし、小四郎から責められ続ける伊沙羅を見遣る。

「そろそろ栄面選手をリングに戻せ。また二人一緒に悦んでもらおう」

 レフェリーの指示にマンハッタンブラザーズの二人がリングを降り、入れ替わりに小四郎がリングに上がる。

 マンハッタンブラザーズが伊沙羅をロープの縛めから解放し、リングに転がし入れる。蘭紗は、思わず嬲られ続けた伊沙羅を見つめていた。そして、伊沙羅もまた蘭紗を見つめていた。

 伊沙羅に遅れ、マンハッタンブラザーズの二人がリングへと上がる。

 その瞬間、蘭紗は右足を振り抜いた。伊沙羅と交わした一瞬のアイコンタクトによる行動。

 狙い通り、残されていた蘭紗のトンファーがリングの上を滑っていく。その先に、伊沙羅の右手が待っていた。

 トンファーを握った伊沙羅の右手が翻り、ほぼ同時にマンハッタンブラザーズの二人をリングに這わせる。

「蘭紗さん!」

 今度は伊沙羅の手からトンファーが放たれ、蘭紗の左手に収まる。

「まだ抵抗するか!」

 その背後から、小四郎が左の掌底突きを放つ。蘭紗が僅かに身を躱し、小四郎の左手首を掴む。同時に、トンファーが垂直に放たれる。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 小四郎の左肘が破壊された音がリングに響く。


<カンカンカン!>


 これには反射的にレフェリーが試合を止めた。左肘の痛みに喚く小四郎を、黒服たちが担架に縛りつけて退場させていく。

「栄面さん」

「ええ、蘭紗さん」

 ただ名前を呼び合うだけで、蘭紗と伊沙羅は相手が何を考えているかがわかった。お互いに頷き、鋭い視線をレフェリーに向ける。

「え・・・? ま、待て、待ってくれ・・・」

 その視線に気づいたのか、レフェリーが後退りする。

「「はぁぁっ!」」

 蘭紗と伊沙羅の横蹴りが、秘部も露わにレフェリーの鳩尾を抉る。

「げべっ・・・」

 ロープまで吹き飛んだレフェリーの体が、反動でリングへと叩きつけられる。

「ふぅ・・・少しはすっとしたけれど」

 無意識でトンファーを回転させながら、蘭紗はもう一撃だけ入れておこうか、などと物騒なことを考える。その身に降り注ぐ視線になど気づいていない。

 それを指摘したのは伊沙羅だった。

「取り合えず、隠したほうが良いのでは?」

「えっ・・・? あっ、ああっ!」

 自分がほぼ全裸に近い格好だということを思い出し、蘭紗は思わずしゃがみ込んでしまう。

 握ったままのトンファーを放り出し、慌ててスポーツブラを戻そうとする。しかし、気が抜けてしまったために、先程まで忘れていた疲労が圧し掛かってくる。更には男たちの乱暴な責めによって、スポーツブラが強烈に捩じれてしまっている。

 蘭紗がスポーツブラの捩じれを戻そうと四苦八苦するたび、自らの汗や男たちの唾液に光るHカップサイズの乳房が揺れ、弾む。その光景に野次が、指笛が飛んでくる。

 しかしどうにか捩じれも解け、蘭紗はスポーツブラを戻して乳房を隠す。

「んっ・・・」

 そのとき、スポーツブラが微かに乳首を掠めた。それだけで思わず吐息が零れていた。

 その腹立たしさを噛み殺し、足首に巻かれていたショーツを慎重に一度足首から抜く。こちらも縒れてしまっているため、疲労に震える手で形を整える。そして座ったまま足を伸ばし、秘部が見えないように改めて慎重に穿き直す。そこで感じた湿り気が屈辱を刺激したが、それでも頭を振って追いやる。

 スポーツブラとショーツをきちんと身に着け、一度深呼吸する。振り返った視線の先に、もう伊沙羅の姿はなかった。

(栄面さん・・・いえ、伊沙羅姉さん・・・ありがとうございました)

 感謝は言葉には出さず、自分のトンファーを持って花道を下がっていく。体力の消耗は激しかったが、それでも一歩、また一歩と歩を進める。

 下着姿の蘭紗に卑猥な野次が飛ばされるが、もう気にならなかった。


▼△▼△▼△▼△▼△▼


 また、蘭紗に日常が戻ってきた。義弟に過剰な愛情を注ぎ、それをうざったがられるという日常が。

 学校で伊沙羅とすれ違うこともあるが、特に話をするわけでもない。目と目を合わせ、軽く頷く程度だ。


 蘭紗は義弟に、自らが習った武術を教え始めた。義弟も過日のことがあったからか、素直に習っている。

 どうやら、義弟はそれを伊沙羅に喋ったらしい。廊下を歩いているときにすい、と身を寄せてきた伊沙羅が、

「弟さんを、私より強くさせるおつもりですか?」

と訊ねてきたのだ。

 蘭紗は悪い笑みを浮かべ、

「いえ、より私との距離を縮めさせます」

と返した。これには伊沙羅も苦笑するしかなかった。


 日常に伊沙羅との縁という変化があったが、蘭紗の身体にも変化があった。ブラが合わなくなってきたのだ。Hカップもある蘭紗のブラが、だ。

(また大きくなったなんて・・・)

 蘭紗はため息を吐き、ファイトマネーで新しい下着を買うことを決めた。その買い物に義弟が付き合わされたのか否か、それは明かされていない。



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