【特別試合 其の七十三 要田七海:総合格闘技】   紹介者:スミ様


 スピーカーからいきなりアメリカンな曲が流れ、画面をタイトルが流れていく。そして暗転。

 暗い屋内を映していたカメラが右にパンし、蝶をモチーフにしたベネチアンマスクと、豊かな胸の谷間に焦点が合わされる。その途端ベネチアンマスクが、否、ベネチアンマスクを着けた女が喋りだす。

『どうも! カナで〜す! みんな〜、元気にしてた?』

 自らをカナと呼び、アメコミヒロイン【ワンダフルウーマン】の衣装を身に纏った女が、カメラに向かって呼びかける。

 目元はベネチアンマスクに隠され表情は読めないが、口元には笑みが浮かんでいる。

『むぐっ、むぅ〜〜〜〜ッ!』

 いきなりくぐもった声が聞こえる。女の後ろで半裸の男が柱に縛られ、頭や足をばたつかせている。

 嬉々とした声のトーンの女とは対照的に、目隠しと猿轡をされた男が必死にもがくのは、どこか異様な光景だった。

『このオッサンは、いたいけなJKに痴漢行為を働いていました。悪い奴だね〜っ、そこで、あたしが"わ・か・ら・せ・て"やろうかな〜、と、思います・・・なぁ、オッサン!』

 カメラから視線を外した女は、身動きが取れない男のどてっ腹に爪先を叩き込む。

『〜〜〜ッ! ぐむぅううう〜ッ!!』

 格闘技をやっていることがわかる女の蹴りが軌道を変えて何度も命中し、男は何度も声にならない声を上げる。そんな光景が十分以上続く。

 最後には、男はほとんど反応を見せなくなった。一度鼻を鳴らした女は、カメラに向かって締めの挨拶をする。

『あー! スッキリ! 今日もわからせちゃったな〜。・・・これからも、女の子を食い物にする悪い男は、あたしがわからせちゃうから。よろしく!』

 動画の内容とは対照的に、明るいトーンで女は締めくくる。

 そこで画面は暗転し、「presented by KANA」の文字が浮かび上がった。


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 犠牲者の名は「要田(かなめだ)七海(ななみ)」。18歳。身長161cm、B90(Gカップ)・W56・H89。

 涙袋のある切れ長の目に凛々しい細眉は、モデル顔負け。胸までくる長さの茶髪には、強めのウエーブがかかっている。総合格闘技によってバランスよく鍛えられたスタイルと、やや色黒の肌は「健康美」と呼ぶに相応しい。

 複雑な家庭環境で育ち、荒んだ幼少期を過ごす。しかし総合格闘技を始めてからというもの、スポーツに打ち込むようになり、実力が一気に開花。人としても成長する。

 一方、家庭の環境は悪くなるばかりだった。特に母親の男遊びが酷く、父親が何度も変わった挙句、ある出来事を機に、七海は16歳にして家庭を飛び出す。

 アルバイトで食い繋ぐ生活を行っていたが、ある日親友が通り魔に襲われる事件が発生。激怒した七海は執念で犯人を見つけ出し、徹底的に痛めつける「私刑」を行った。それを契機に、七海の中でねじ曲がった正義感が育ってしまう。

 以後、コスプレ衣装に身を包んでは法で裁けない、あるいは被害者が委縮して訴えられない性犯罪加害者を捕らえ、徹底的に痛めつける配信を嬉々として行うようになる。しかし、動画を上げてもすぐに運営会社から削除されるということを繰り返し、遂には裏のサイトで配信し始める。

 私刑配信の最中、彼女は触れてはいけないものに触れてしまった。その配信のターゲットが、<地下闘艶場>の観客の一人だったのだ。

 七海自身が<地下闘艶場>のことを知る由もないが、この配信で完全に標的とされた。強さだけでなく、気丈な性格を隠そうともしない美貌と、鍛えられたメリハリボディの持ち主ならばそれも当然だろう。

 間もなく七海に、<地下闘艶場>から脅迫状が届いた。そこには個人情報のすべてが記載され、皮肉にも配信ですべてを開示する、と書かれていた。ただし、<地下闘艶場>に参戦するならば開示はない、とも。

 脅され、参戦せざるを得ない状況に追い込まれた七海。しかも、三連戦に勝利しなければ<地下闘艶場>で働き続ける、という条件付きでもあった。


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「おーおー、居る居る。わからせてやりたい奴らが山盛りだねぇ」

 フードを頭から被ったガウン姿の七海が、花道を進んでいく。周囲からは卑猥な野次や指笛が飛ばされるが、七海はまるで気にせず歩を進めていく。

「・・・ふーん、相手も男か〜。そんなとこだろうね」

 リング上にいるのは、レフェリーと思しき蝶ネクタイの中年男と、褌一丁の中年男だった。

「ま、慣れてるしね」

 余裕の笑みを浮かべ、七海はリングに上がった。


「赤コーナー、『ギャランドゥ』、火筒剛!」

 七海の第一戦の相手は、頭部には一本も毛がないのに、それ以外は全身剛毛だらけの火筒(ひづつ)剛(ごう)だった。しかも褌一丁という格好であり、さすがの七海も近距離で見ると眉を顰めた。

「青コーナー、『復讐の配信者』、要田七海!」

 フード付きのガウンを脱ぎ去った七海の衣装は、動画のときと同じものだった。

 顔は蝶のモチーフのベネチアンマスクで隠されている。

 上半身は鮮やかな赤色のチューブトップに、鎧のような装飾が施されている。しかも胸元が大胆に開いており、激しい動きをすれば豊かな胸の先端が見えてしまいそうだ。しかしデザインがしっかり計算され、どんなに動いても「見せない」ように作られている。

 下半身は青色のミニスカートで、こちらも鎧のような装飾が施されている。

 更に籠手やブレスレット、腰に下げた紐にいたるまで、アメコミヒロイン【ワンダフルウーマン】が再現されている。これが七海のハンドメイドと知っている者は、ほとんど居ないだろう。

 衣装が露わとなった途端に、七海を更なる欲望の視線が襲う。それでも七海は動揺も見せず、笑みを浮かべたままだった。


 火筒のボディチェックを一瞬で終えたレフェリーが、七海へと向かってくる。

「それじゃ要田選手、ボディチェックを・・・」

「い・や・だ」

 欲望に目をギラつかせて近づいてきたレフェリーに、わざとらしく一音一音区切って告げてやる。

「あたし、すぐにわかっちゃうんだよね〜、あんたみたいに下心丸出しの奴。ボディチェックとか言って、胸とか尻とかに触るんだよね?」

 籠手に見えるオープンフィンガーグローブを軽く打ちつけ、七海はレフェリーに視線を向ける。

「そんなことされたら、あたし、反射的に・・・半殺しにしちゃうかも」

 暴力沙汰を繰り返してきた七海の視線は冷酷で、レフェリーは思わず後じさる。

「ゴ、ゴング!」


<カーン!>


 両手の指をワキワキとさせながら、火筒がにじり寄ってくる。

「さーて、七海ちゃん、おじさんと遊ぼうか」

 七海の返答は、右のローキックだった。

「あいたぁっ!?」

 七海の強烈な一撃に、火筒があっさりとダウンする。

(うわ、気色悪! なにこのオッサンの毛!)

 攻撃した七海のほうも、精神的ダメージを受けていた。

 火筒の全身を覆う剛毛はその感触により、触れた者に不快感を与えるのだ。そのため、最後の腰の回転が入らなかった。

「おい火筒、これで終わりじゃないだろうな!」

「まずいよ、七海ちゃん、かなり強いよ」

 レフェリーの焦った声に、火筒も泣き言を返す。

「はいおじさん、立って立って。このままじゃ盛り上がらないでしょ?」

 寝技を嫌った七海の手招きに、火筒は左脚を気にしながら立ち上がる。

「ほら立てた。それじゃ、お次はっ!」

 火筒の顔面に狙いを定め、拳を構える。

「うひぃ!」

 流石に火筒も顔面を守り、七海は剛毛塗れの腕を殴ってしまい思わず怯む。

「・・・隙ありだよ七海ちゃん!」

 火筒が目敏くその隙を衝く。いきなり七海の両胸を掴んだのだ。

「ひあっ!?」

 七海の口から、女の子っぽい悲鳴が洩れる。しかしそれも一瞬で、すぐに表情が切り替わる。

「この、変態毛モジャがっ!」

 七海の右の拳が火筒の顔面を撃ち抜き、ダウンさせる。その倒れ方に、レフェリーは即座に試合を止める。


<カンカンカン!>


 終了のゴングが鳴らされ、火筒は担架で退場させられていく。

「うえー、気持ち悪! なんなんだよあのモジャ毛」

 七海は身体のあちこちを擦り、火筒の剛毛の感触を落とそうとする。その間に、もう次の相手がリングに上がっていた。

「要田選手、すぐに始めても大丈夫か?」

「オッケー、いいよ」

 七海は頷き、第二戦の相手を見据えた。


「赤コーナー、『ノーペイン』、尾代呑太!」

 七海の第二戦の相手は、尾代(おしろ)呑太(どんだ)だった。そこまで凄い肉体を持っているわけでもなく、立ち姿に脅威も感じない。

「青コーナー、『復讐の配信者』、要田七海!」

 七海はもう気持ちを切り替え、軽く関節を解す。

「ボディチェックは・・・いや、ゴング!」

 何かを言いかけたレフェリーだったが、すぐに試合開始の合図を出す。


<カーン!>


(今度は毛モジャじゃないし、まだもう一試合あるし。さっさと終わらせよっと)

 軽いジャブで間合いを測り、本命の右ストレート。尾代の顔面を捉えた一撃は、七海の予想を裏切った。尾代は平気な顔で前進し、七海の右胸を掴んだのだ。

「きゃっ!」

 可愛い悲鳴を上げ、七海は胸を庇う。

「やっぱり、セクハラ攻撃に弱いっスね!」

 打撃で赤くなった左頬を気にも留めず、尾代は七海に抱きつく。当然顔をGカップの両胸に埋めながらだ。

「はっ、放せ、この・・・んんっ!」

 尾代を引き剥がそうとして、ヒップにも触られてしまう。

「おっぱいとお尻でこれなら、ここはどうっスかね?」

 尾代は左手で抱きついたまま、右手で七海の秘部を弄る。

「んあっ!」

 自分でも想像もしなかった声に、七海の頬が赤らむ。

「さて、やっとボディチェックができるな」

 ここぞとばかりにレフェリーが近寄り、ヒップを撫で回してくる。

「きゃっ! あっ、ちょっ、んん!」

 普段の調子とは裏腹な羞恥交じりの声に、男たちの興奮が高まる。

「あー、おっぱいの感触が最高っス〜」

「お尻も張りつめてて良いぞ」

 尾代は抱きついたままGカップバストに顔をぐりぐりと押しつけ、レフェリーはヒップを揉み回す。このセクハラ攻撃に、何故か七海は強く抵抗できない。


 七海は総合格闘技の実力を磨き、自信を得ることができた。そしてその実力から、相手から攻撃を受けることはほとんどなくなった。

 それに、実は性的な経験がほぼ皆無で、異性から触れられるのは総合格闘技での練習くらいだ。七海が通う道場では下心目的で練習相手となる男性は居らず、そちらの経験を積んだこともない。

 そのため、七海はセクハラへの耐久力がなく、自分より遥かに弱い男たちに追い込まれているのだ。


「うはー、おっぱいの感触最高っス。今度は手で確認するっス!」

 尾代は七海の胸から顔を上げ、両手で揉み始める。

「おっと、ここもボディチェックで確認しないとな」

 レフェリーは七海の秘部に手を這わせ、感触を楽しむ。

「や、やめろぉ、変なとこ触んな・・・ふゃぁん!」

 鼻にかかった声で抗議しても迫力も何もなく、男たちのセクハラが止まる筈もない。

「レフェリー、そろそろおっぱいとアソコ、交代しないっスか?」

「そうだな、まだ要田選手のおっぱいチェックをしていないからな」

 それぞれ責める場所を変えるため、男たちの手が七海から離れる。

「っ!」

 その隙を見逃さず、七海は一気に距離を取る。

「あっ、逃げられたっス!」

「なにを油断してるんだ尾代! また捕まえろ!」

「言われなくても、っス!」

 尾代は攻撃するならしてみろとばかりに、ノーガードで突っ込んでいく。

「・・・よくも、やりやがったな!」

 セクハラを受けた七海の怒りが、右のローキックへと乗り移る。

「あらっ?」

 痛みを感じない尾代だったが、技の衝撃自体をなくせるわけではない。七海のローキックに左脚を打ち抜かれ、僅かに浮いた体が半回転する。

 体勢を崩した尾代の背後から七海の両腕が絡みつき、スリーパーホールドに捕らえていた。

「あたしの身体を好き勝手したんだ、しっかりとわからせてやるよ!」

 七海の左腕が尾代の頸動脈に食い込み、酸素の供給を断つ。やがて尾代の両目が裏返り、全身から力が抜ける。


<カンカンカン!>


 即座にレフェリーが両手を交差し、ゴングが鳴らされる。七海はスリーパーホールドを解いたが、同時に尾代の後頭部を殴りつける。

「おい待て、もう試合は終わったぞ!」

 倒れ込んだ尾代へ更にサッカーボールキックを叩き込む七海を、レフェリーが制止する。

「ああん?」

 七海の血走った目が、レフェリーを捉える。

「あんたも、あたしの身体を触りまくってくれたね」

 指を鳴らしてレフェリーを睨む七海の迫力に、身の危険を感じたレフェリーは必死に言い募る。

「ま、待て、待ってくれ、今は落ち着いてくれ。次の試合後だったらどんなことも甘んじて受ける、だからもうちょっとだけ我慢してくれ!」

 早口で捲し立て、更に言葉を継ぐ。

「失格にはなりたくないだろう?」

「・・・チッ」

 それを持ち出されると七海も無理は言えない。

(まあいいさ、次が最後。勝った後でボッコボコにしてやるよ)

 剣呑な思いを抱いたまま、七海は恐い笑みを浮かべた。


 暫くして、第三戦目の相手が花道に現れる。花道を進む小柄な姿に、会場がどよめく。どよめきは歓声へと変わり、あっという間に会場を呑み込み、凄まじい音量で鼓膜を叩く。

 その姿が近づくにつれ、道衣に身を包んだ老人だと見て取れる。何故この老人に対して観客がここまで興奮するのか、七海にわかる筈もなかった。


「赤コーナー、『最強老人』、元橋堅城!」

 老人の名は元橋(もとはし)堅城(けんじょう)。黒い道衣に身を包み、腰には使い込まれた黒帯を締めている。にこにこと佇む姿は好々爺然としているが、七海にはわかる。わかってしまう。

「青コーナー、『復讐の配信者』、要田七海!」

 自分の名前がコールされても、七海の耳には入らなかった。

(なんなんだ・・・なんなんだよ、この爺さんは・・・!)

 元橋から感じる凄味。圧迫感。なにより、自分の身体と心が闘うことを拒否している。知らず落とした視線の先に、手作りの衣装が映る。

(・・・だけど、【ワンダフルウーマン】は化物退治だってしてたよね)

 自分が身に着けたコスチューム。七海が憧れたヒロインは、どんな強敵にも打ち勝ってきた。

(やってやる・・・あたしが、わからせてやる!)

 七海は握り締めたままの拳を構え、元橋を睨みつけた。その殺気に気圧され、レフェリーは息を止めてゴングを要請した。


<カーン!>


 ゴングが鳴っても、七海は前に出られなかった。覚悟を決めた筈なのに、元橋から受けるプレッシャーが前進を許さない。

 にこやかな表情のまま、視線だけは鋭く元橋が口を開く。

「お嬢さん、自分がやらかしたことを理解していますかな?」

 静かな元橋の問い。それだけで七海は身を固くしていた。

「・・・ふむ、答えはなし。ならば、闘うのみですなぁ」

 いつの間にか元橋が目の前に居た。信じられなかった。しかし、七海も練習の成果を見せ、反射的にパンチを放っていた。

「ぐぶっ・・・」

 右のパンチは空を切り、鳩尾で痛みが弾けた。ぞわり、と背中に悪寒が走り、勘のままに背後へとバックブローを振り抜く。

「ふむ、なかなかやりますな」

 振り向いた視線の先、バックブローの間合いぎりぎりに元橋の顔があった。

「ちぃぃっ!」

 打撃では敵わない。ならば、寝技勝負!

 両脚で元橋の足を刈るカニばさみで寝技に引き込んだ、筈だった。七海のカニばさみにも、元橋は微動だにしていなかった。

「ふむ、寝技をご所望ですかな?」

 元橋はそのまま七海の上に乗ろうとする。七海はそれをさせじと、元橋の膝を蹴ろうとする。しかしひょいと躱され、腹の上に乗られてしまう。

「ぐぅっ!?」

 ごつり、と鈍い音が脳に響いた。元橋の掌底が、額へとぶつけられたためだ。

 七海は頭部をガードするが、今度は腹部で痛みが弾ける。思わず腹を庇おうとした手に、冷気に似た感覚が走る。即座に手を引き、ガードポジションを取る。

「ふむ、反応が良いですなぁ」

 元橋は七海の腹部へ一撃を入れ、痛みから守りに使おうとするであろう手を狙っていた。しかし、修練によって得られた勘が七海を救った。

 と、元橋が立ち上がり、七海から離れた。元橋の狙いがわからず、七海は混乱する。油断しないよう慎重に、元橋の様子を伺いながらゆっくりと立ち上がる。

(なんてこった・・・もう足が笑ってるよ)

 元橋との試合はそこまで時間が経っていない。それなのに、根こそぎ体力が奪われていた。

「さて、一つ提案ですが、負けを認めませんかな?」

 いきなり投げられた言葉に、反射的に構えを取る。

「今なら、負けるだけで済みますが・・・どうしますかな?」

「・・・あたしは・・・負けを、認めない。あんたにも、わからせてやる・・・!」

 しかし、七海の闘志は消えていない。痛みと疲労を噛み殺し、元橋を睨みつける。

「そうですか。ならば、仕方ありませんな」

 元橋がやれやれと首を振る。その間も七海は油断しない。していない筈だった。

 いきなり視界が歪んだ。背中に衝撃が奔った。遅れて痛みが来る。更に右肩にも。

「あ・・・が・・・」

 七海は元橋に投げ技の肩車で抱え上げられ、コーナーポストに投げつけられた。そのままリングに落ち、何が起こったかわからないまま呻くだけだ。

「さて、これから先は色責めの時間です」

 その言葉と共に、衣装の胸元が大きく破られる。ぎりぎりでいつも隠されていた乳首が、露わとされてしまった。たちまち欲望の視線が乳首目掛けて放たれる。

「では、まずは乳首から」

 元橋の右人差し指が、七海の左乳輪から乳首を下からなぞり上げる。

「ひうぅぅっ!」

 たったそれだけで、七海は大きく喘いでいた。

(い、今、なにされた・・・? 電気が、ビビビ、って・・・)

 驚きも束の間、両方の乳首が優しい力加減で転がされる。

「はわぁあん!」

 快感が痛みを凌駕した。これ以上の快感は受けたくなく、両胸を庇う。

「ふむ、では、こちらですな」

「あひぃぃぃっ!?」

 秘裂を撫でられた。下着の上からだと言うのに、腰が跳ねた。思わず秘部を責める元橋の手を払おうとすると、すかさず乳首を責められる。

(遊ばれてる・・・!)

 元橋はまだ本気ではない。少しの手合わせでわからされてしまった。反撃の手も思いつかず、右手で両乳首を、左手で股間を隠す。

「無粋なことをしますなぁ」

 七海が受けに回ってしまったことに、元橋はため息を吐いた。

「少しでも足?いてもらいたかったのですが・・・ま、仕方ありませんか」

「あぐっ!」

 股間を隠していた筈の左腕が、背中へと捩じり上げられていた。右腕も同様にされ、そのまま仰向けで抑え込まれてしまう。これで、七海は自らの体重で両腕を押さえた状態となった。

「では、そろそろ本格的に喘いでもらいましょうかな」

 七海の腹の上に座った元橋が、快楽責めを宣言する。

「くそっ!」

 どうにか反撃しようと、自由な足で蹴ろうとするが、乳首への刺激で防がれる。既に乳首は硬くなっており、元橋から与えられる刺激をしっかりと受け止めてしまう。

「あっ、はっ、そ、そこは、やめ・・・はふぅん!」

「そことはどこですかな?」

 元橋は口調だけは柔らかく、乳首責めを止めない。乳首を撫で、擽り、転がし、押し潰し、扱き上げる。そのたびに七海は首を振り、喘ぎ、声を上げる。しかし逃れることなどできず、ただ快楽に翻弄される。

「まずは一度、達してみますか」

 元橋が優しく乳首を押し込み、振動責めを加えてくる。

「あっ・・・」

 自分の乳首が、こんなに硬くなるとは知らなかった。

「はぁあ・・・」

 自分の乳首だけで、こんなに気持ち良くなれるとは知らなかった。

「あっ、あっ、あっ、あぁあああぁああああぁあん!」

 七海の口から放たれたのは、絶頂の叫びだった。それは、生まれて初めての経験だった。

「ぁ・・・ぁぁ・・・ひんっ!」

 小さく呼吸する七海だったが、元橋に乳房を触られると喘いでしまう。乳首で感じさせられていた身体が、乳房でも反応するようになってしまっている。

(くぅっ・・・ここまで、されるなんて・・・でも、なんで二人掛かりじゃないんだ?)

 不思議なのは、レフェリーが一切手を出してこないことだった。心が快感責めから逃れるためか、関係のないことに思考を飛ばす。

 そのため、元橋が蝶のベネチアンマスクに手を掛けたことに気づくのが遅れた。

「あっ、やだぁ・・・」

 どうにか元橋の手から逃れようとするが、首を振るくらいしかできない。

「やはり、顔が見えていたほうが良いですからな」

 あっさりとベネチアンマスクが外された。

「ふむふむ、隠すには勿体ないお顔ですなぁ」

「えっ・・・あんっ!」

 褒められた瞬間に、乳首を転がされる。

「さて、乳首だけ、と言うのも飽きるでしょうからな。こちらでも、気持ち良くなってもらいましょうか」

 元橋の左手が七海の右乳首を弄り、元橋の右手が七海の秘部へと伸ばされる。

(こ、ここだけは!)

 本能的な恐怖に、膝を立て、太ももを閉じる。

「そうそう、そういう抵抗を欲していました」

 うんうんと頷きながらも、元橋の右手はするりと太ももの間をすり抜け、秘裂を優しく撫でる。

「あひぃっ!」

 甘くも強烈な刺激に、七海は頭を仰け反らす。

「気持ち良いですかな? では、お勉強と参りますか」

 横側が破れるほどにスカートを捲り上げた元橋が、乳首と秘部を同時に刺激する。

「あひっ、ひっ、ひぎぃぃっ!」

 元橋の淫技に、脳が沸騰したようだった。快感だけが脳を一杯にし、何も考えられない。元橋の手を拒んでいた筈の太ももも伸ばされ、足は勝手にばたつく。

「では、二度目、達してみますか」

「えっ、あっ、はっ・・・・あはぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!」

 元橋が秘部へと振動を加える。七海はあっさりと陥落し、今日二度目の絶頂へと到った。

「あ・・・あはぁ・・・」

 達した後の虚脱感に荒い息を吐く七海だったが、もちろんこれで終わるわけもない。

「さてさて、何度目で素直になってくれますかな?」

 元橋の変わらぬ笑顔が、七海を絶望へと追いやった。


「あ・・・おぉ・・・」

 元橋に責められ続けて、既に十分が経過していた。もう何度絶頂に達したのかわからない。既に寝技は解かれているが、元橋から逃れるだけの体力は残っていない。

「お嬢さん、負けを認めれば楽になりますぞ?」

「だ、誰が・・・あひぃぃぃっ!」

 拒んだ瞬間に淫核を擽られ、またも絶頂する。

「あ、あぁ・・・ひいぃぃん!」

 絶頂の後の気怠さを、新たな快感で塗り潰される。

(くっ、くそぉっ、負けたら、終わりなんだ・・・! 勝たなきゃ、駄目なんだ・・・!)

 三戦すべて勝ち抜かなければ、この<地下闘艶場>で働かされ続ける。ここまでの試合を振り返れば、碌な働かされ方をしないのは目に見えている。

 しかし。

「これが最後の助言ですぞ。負けを認めませんか?」

 元橋の手が優しくも激しく責め立ててくる。それを耐えられるほど、七海の心と身体は官能に強くなかった。

「あっ、やっ、ああぁっ、だっ、はぁぁああああああぁぁぁ・・・っ!」

 何度も絶頂に達しながらも、それでも七海は頭を横に振った。そのままリングの上で大の字となってしまう。

「ならば仕方なし、私も疲れましたので、抑え込みといきますか」

 馬乗りになった元橋が、七海の肩を押さえる。

「ワン、ツー、スリーッ!」


<カンカンカン!>


 七海の敗北を告げるゴングが鳴らされる。もう、七海にフォールを返すだけの体力は残されていなかった。

「ではお嬢さん、これで」

 元橋は試合も何もなかったかのように立ち上がり、すたすたとリングを後にした。

(くそっ・・・まったく敵わなかった・・・!)

 七海は仰向けのまま動けない。疲労と悔しさとに塗れ、気力が消失している。できるのは、半壊した衣装でどうにか身体を隠すくらいだ。

「残念だったなぁ、要田選手」

 リング中央で横たわる七海に、レフェリーがわざとらしく話しかけてくる。

「・・・なんだよ、まだ言いたいことがあるのかよ」

「いや、条件の確認だ。三連戦の最後に負けたからな、これからは<地下闘艶場>で永遠に働いてもらうことになったわけだ」

「・・・」

 七海の実力ならば、三連戦でも楽勝だと思っていた。現に一戦目と二戦目はそこまで苦労をしていない。

 それでも負けは負けだ。あの化物染みた老人に勝つことができなかった。

「だが、そんな要田選手に、お得な提案がある」

 レフェリーが思わせ振りな発言をする。

「今からもう一回だけ、追加試合を行う。もしそれに勝てば、さっきの敗北を帳消しにしようじゃないか」

「・・・ファイトマネーのアップも、つけてくれ。それなら受ける」

 後がない状況でも、七海は少しでも条件を良くしようと粘る。

「うーん・・・そうだな、勝てばファイトマネーを増額しよう」

「決まりだな・・・」

 レフェリーが頷いたのを見て、七海はゆっくりと立ち上がる。

「で、相手は? さすがに今の爺さんは無理だよ」

「安心しろ、第一戦と第二戦で闘った相手だ。ただし、二人同時に相手をしてもらう」

「二人一緒か・・・」

 二人共、実力はそれほど高くない。先程はセクハラ攻撃に不覚を取ったが、それさえ気をつけておけば勝利は動かない。但し、万全の状態ならば、という条件がつく。

(正直、体力も底をつきかけてる。コスチュームもこの有様だ)

 自慢の衣装は元橋にあちこち破かれ、手で押さえていなければ落ちてしまいそうだ。しかも下着はぐっしょりと濡れており、気持ち悪さと屈辱を感じさせてくる。

(でも、やるしかない。絶対に勝つ! あたしの実力、わからせてやる!)

 自分の人生が誰かに決められるなど、真っ平御免だ。七海はぎしりと奥歯を噛みしめた。


 リングへと、第一戦、第二戦を闘った火筒と尾代が再び上がる。七海が攻撃した箇所は変色しているが、顔色を見るとどうやら痛みや疲労はないらしい。その辺も裏の組織の運営により、高価な薬や栄養剤などが準備されている、などの理由だろうか。

 対してこちらは向こうが休んでいる間、元橋に玩ばれている。体力的についた大きなハンデに、七海は大きく深呼吸することで気持ちを宥めた。


 男性選手二人のボディチェックをさっさと終えたレフェリーが、七海へと向かってくる。

「要田選手、今度こそボディチェックを・・・」

「いやだね」

 またもボディチェックを拒む七海に、さすがにレフェリーの顔色が変わる。

「ボディチェックを拒むなら・・・」

「あのな、この試合にあたしの将来が懸かってるんだよ。少しでも体力を残しておきたいんだ、わかるか?」

 苛立ち交じりの殺気をレフェリーに叩きつける。

「あんたくらいなら、まだ瞬殺できるだけの体力は残ってるよ」

「む・・・ぐ・・・」

 レフェリーは冷や汗を流し、硬直している。

「どうするんだい!?」

 七海の怒号に、レフェリーは小さく飛び上がる。

「ゴ、ゴ、ゴング!」


<カーン!>


 いきなり最終戦が始まった。

「それじゃ呑太くん、さっきの作戦通りにね」

「納得はしてないけど、了解っス」

 火筒と尾代は何やら作戦を練ってきたようで、お互いに何か合図をし合う。

(くそっ、怒鳴るんじゃなかった。無駄な体力を使っちゃったよ)

 今も自然と呼吸が荒くなりかける。それをなんとか押し隠し、重い両手を胸の前で構える。

「それじゃ、おじさんから行こうかな?」

 火筒が前に出ようとしたので、迎撃しようと拳を握る。しかし火筒はすぐに下がり、今後は尾代が近寄ってくる。そちらに攻撃しようとするが、尾代も慌てて後ろに下がる。

(こいつら・・・!)

 火筒と尾代が交互に七海との距離を詰め、間合いに入る寸前で離れるということを繰り返す。七海にしてみれば警戒を解くわけにはいかず、一々反応することで僅かな体力も削られていく。

「っ!」

 しかも下手な動き方をすれば、破れた衣装が落ちそうになる。男たちに裸を見られるのが嫌で、衣装を押さえる。

「じれったいっスね、火筒さん」

「呑太くん、そう言わないでよ。七海ちゃんは目茶苦茶強いんだから、もっと弱らせないと」

 やはり、男たちの狙いは七海の消耗にあるらしい。

(なら!)

 もう衣装を押さえるのは止め、火筒の顔面に狙いを定める。衣装が捲れ、乳房が露わとなった。

「おおっ、おっぱい丸見え!」

 火筒の視線が、七海の両胸へと吸い寄せられる。

(食らえっ!)

 七海の拳が振るわれる。数多の男たちを「わからせてきた」拳は、悲しいほどに遅かった。

「危ないっス!」

「ひあっ!」

 しかも、横合いから尾代がタックルしてきた。否、抱きついてきた。

「うはっ、生乳っス! 最高っス!」

「て、てめぇ、離せよ!」

 尾代を押し離そうとするが、体力の消耗が膝の力を抜いてしまう。

「あっ!?」

 そのまま尾代に圧し掛かられてしまう。

「ナイスだよ呑太くん!」

「パフパフっス、パフパフっス!」

 火筒の声など聞こえないのか、尾代は七海のGカップの乳房を両手で寄せ、自分の顔に押しつける。

「後で交代だからね?」

 そう言いながら、火筒は七海の両手を膝で押さえつける。

「ひっ!」

 その剛毛の感触に、七海は身動きすら厳しくなる。

「むふぅ、やっとおじさんも楽しめるよ」

 七海を上から覗き込み、舌舐めずりした火筒は、七海の顔を横から掴む。そのまま七海の唇を奪った。

「んっ、んんぅ、んむむむっ!」

 火筒の髭が七海の鼻や頬に当たり、おぞましさと不快感を倍増させる。しかし下手に動けば更に不快感が増すため、七海は火筒の口づけから逃れることができない。

「ああ、パフパフは最高っス。でも、乳首も最高っス」

 七海の乳房から顔を上げた尾代は、今度は乳首を弄り始める。元橋の責めを受け続けた乳首は、尾代からの刺激でも簡単に立ち上がってしまう。

(くそっ、放せ、退けよ!)

 口が塞がれているため、心の声は男たちに届かない。勿論、届いたとしても無視しただろうが。

「ぷはっ。七海ちゃんの唇、美味しいねぇ」

 火筒が口づけを止め、今度は唇を舐めてくる。

(このクソモジャ・・・!)

 噛みついてやろうと口を開きかけるが、

「んああっ!」

 乳首への刺激で喘ぎ声が出てしまう。大きく開けてしまった口を、火筒が再び塞ぐ。更に七海の舌を甘噛みし、火筒の舌でつつき回してくる。

(き、気色悪い・・・!)

 足をばたつかせ、僅かにでも不快さを逃そうとする。と、その気持ちが伝わったのか、火筒が顔を上げた。

「呑太くん、そろそろ代わってよ。おじさんも七海ちゃんのおっぱいで遊びたいよ」

「仕方ないっスね、自分はまだ楽しみたいけど、交代してあげるっス」

(・・・こいつら・・・!)

 火筒と尾代の勝手な言い草に、七海の怒りが掻き立てられる。場所を入れ替わろうと二人が立ち上がり、反撃に出ようとした瞬間だった。

「はあぁん!」

 背後から忍び寄っていたレフェリーの秘部責めに、嬌声を上げてしまう。

「おいおい、こんなにパンツを濡らして、まだ抵抗する気か? いい加減に諦めたらどうだ?」

 反攻の気合いが、秘部からの刺激に打ち消されてしまう。

「それじゃおじさん、七海ちゃんのおっぱいを楽しませてもらうよ」

「ひいぃっ!」

 剛毛で覆われた火筒の手が、七海の乳房を掴む。気持ち悪いどころの話ではなかった。

「うーん、やっぱり大きいおっぱいは良いねぇ。おじさん嬉しくなっちゃうよ」

 火筒は勿論掴むだけでは終わらず、ゆっくりとしたリズムで乳房を揉んでいく。更に、乳首にまで指が触れてきた。

「もう乳首もビンビンだよ? 七海ちゃんも気持ち良くなってるみたいで、おじさん嬉しいなぁ」

「あっ、はぁぁん! やっ、くぅぅ・・・っ!」

 火筒の言葉にも反応できず、七海は喘ぐばかりだ。抵抗もできず胸責めを続けられる美少女に、観客席からは野次や指笛が飛ばされた。


「あっ、あああっ・・・・はぁあぁ・・・」

 ひたすらに乳房と乳首を弄られ続け、七海は熱い吐息を吐いていた。

「いやー、七海ちゃんは可愛いねぇ。おじさん、もっと苛めたくなっちゃうよ」

 火筒が胸責めを止め、右手を下げていく。その手が、七海のミニスカートを掴んだ。

「やんちゃなミニスカヒロインを苛めるのもいいけど・・・」

 ミニスカートを何度も上げ下げする火筒が、にたりと笑う。

「そろそろ、七海ちゃんのオールヌードも見たいよね?」

(な、なんだって!?)

 そこまでするのか、という驚きが七海を襲う。しかし、この連中ならやりかねない。

「ということで、まずは、ミニスカートを頂くよ?」

 火筒の手で、七海が何日も掛けて完成させたミニスカートが破かれた。

「チラチラ見えるパンツも良いっスけど、丸見えのパンツも良いっスね!」

 七海の精神的な打撃にも気づかず、尾代が七海の下着を食い入るように見つめる。

「ああ、そうだな。だが、上も残っているよな?」

 レフェリーの指摘に、火筒が頷く。

「まあ、半分は見えちゃってるけどね」

 火筒が、ほぼ前面が開かれている七海の衣装に手を掛ける。

「ああ、やめろ、脱がすな・・・!」

「それは聞けないよ七海ちゃん。諦めて脱ぎ脱ぎしようね?」

 七海が丹精込めて縫い上げた衣装が、襤褸布のように引き裂かれた。七海の裸身が、下着一枚を残して男たちの目に露わとなる。

 しかし、これで終わりではない。ここが<地下闘艶場>である以上、これで済む筈もない。

「それじゃ、これも脱ぎ脱ぎしちゃおうか?」

 火筒が、下着に手を伸ばしたのだ。

「やめろ、それは洒落になんないぞ!」

「洒落じゃないからね、やめるわけにはいかないよ」

 七海の制止など鼻で笑い、火筒は下着を掴む。

「でもそうだなぁ、七海ちゃんからおじさんにキスしてくれる、って言うなら考えてもいいかな?」

 その提案は、七海の怒りしか生まなかった。

「・・・ふざけんな!」

「そっかぁ、おじさん残念だなぁ」

 ため息を吐いた火筒は、下着を一気に引き摺り下ろした。

(な、なんてことしやがる・・・!)

 遂に最後の一枚までもが奪われ、七海の裸身が晒されてしまった。籠手を模したオープンフィンガーグローブとシューズが残されているのが、逆に卑猥だ。

「それじゃ、おじさんは戦利品を・・・」

 なんと、七海から剥ぎ取った下着を、火筒が頭に被った。

「こ、こ、この・・・変態めぇ!」

 七海は怒りを乗せ、火筒を殴る。否、殴ろうとした拳は作れず、一度上がった腕がぱたりと落ちる。

(体力が・・・ここまで、なくなってるのかよ・・・)

 怒りに加え、苛立ちまでもが胸中に渦巻く。

(最後に、こんな格好にさせられるなんて・・・くそぉ・・・っ!)

 七海は最後に羞恥に晒されたと思った。だが、これで終わりではなかった。むしろ、これからが本番だった。

「それじゃ、七海ちゃんもすっぽんぽんになったことだし・・・しっかり楽しんでね!」

 七海の裸身に、またも男たちの手が伸ばされる。

「ひ、人を裸にしといて、なにしやが・・・あううっ!」

「なに、と聞かれても、お客さんに楽しんでもらっているんだよ」

 七海の秘部を撫で回しながら、レフェリーが薄く笑う。

「そうそう、お客さんは大事にいけないからね。おじさん、頑張っちゃうからね」

 火筒は七海の頬を持ち、その唇を奪う。

「それじゃ、俺はおっぱいを!」

 尾代は七海の右胸を揉み、右乳首に吸いつく。

「んぐっ、んんっ、んむむぅ・・・っ!」

 何試合も闘い、何度も絶頂を味わわされ、七海に抵抗する力は残されていない。唇を、乳房を、乳首を、秘部を、淫核を、男たちに好き勝手に弄られても、殴り倒すことも、跳ね除けることもできなかった。


「うっ・・・あっ・・・はぁ・・・うあぁ・・・っ!」

 リングの上、七海の喘ぎ声が零れる。裸体を男たちに責められ続け、もう声くらいしか出せない。

「それじゃそろそろ、おじさんタイムにさせてもらおうかな」

 そう火筒が言うと、観客席も盛り上がる。

「仕方ない。その代わり、しっかり盛り上げてくれよ」

「後で交代っスからね!」

 レフェリーと尾代が七海の肢体から離れ、火筒だけが七海に覆い被さる。

(ううっ、気持ち悪い・・・!)

 七海の拒否感になど気づかず、火筒の剛毛が密集した右腕が、左腕が、右脚が、左脚が、七海の裸身に絡みつく。

「おじさんはね、女の子が気持ち良くなってくれる様子が大好きなんだよ。七海ちゃんも、とっても気持ち良くしてあげるからね?」

「や、やめろ・・・はあぁん!」

 まるでワイパーのように、火筒の両腕が七海の乳房を上下に往復する。そのたびにトップサイズ90cmを誇る七海のGカップバストが、左右共に歪み、揺れ、弾む。

「あぎっ、ぎぃうぅ、はぎぃぃぃっ!」

 乳房だけでなく、何度もの色責めで硬く立ち上がったままの乳首も剛毛の刷毛責めを受け、不快感と共に七海の官能を否応もなく高めていく。七海は逃げることもできず、剛毛での胸責めに叫び声を上げる。

「良い反応してくれるねぇ、七海ちゃん。おじさん、もっと張り切っちゃうよ」

 舌舐めずりした火筒は、七海を土下座のような四つん這いにさせる。

「呑太くん、七海ちゃんの手を押さえといてね」

「了解っス」

 そして万が一七海が逃げないように、尾代に手を押さえさせる。

「さあ、七海ちゃんは喜んでくれるかな?」

 そのまま、剥き出しの秘部に右腕を当てた。

「ひっ・・・!」

 火筒の剛毛が、秘裂に直接当たる。しかも、火筒がゆっくりと腕を動かし始めた。

「うわぁああぁぁっ! やっ、やめっ、はぎぃぃぃぃぅうぅっ!」

 その効果は絶大だった。剥き出しの秘裂だけでなく、淫核まで剛毛責めを受けては堪らなかった。

「や、はぁっ、うぅっ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁんっ!」

 絶叫した七海の身体から力が抜ける。

「おい火筒、そろそろ良いだろう?」

「はいはい、おじさんばっかり楽しむのは駄目だよね」

 肩を竦めた火筒が、七海にフルネルソンと大股開きを掛け、そのまま七海ごと仰向けになる。七海は火筒を甲羅とした亀のような体勢とされてしまった。

「さあ呑太くん、交代だよ」

「やっとっスか、待ちくたびれたっス」

 文句を言いながらも、尾代は火筒の剛毛に触らないようにして七海の乳房に手を伸ばす。

「それじゃ、俺はこっちを可愛がってやろう」

 レフェリーは七海の秘部へと手を伸ばし、秘裂を指で弄る。

「うあっ、やめやがれ、くぅっ、じゃないと、痛い目・・・ふわぁっ!」

 身動きしようとすれば、火筒の剛毛に背を撫でられ、不快感が奔る。そのため男たちの責めをじっと耐えることになり、快感が高まっていく。

 もう既に何度も絶頂へと叩き込まれている。身体は疲労しているのに、より敏感さを増していっている。レフェリーの手が、尾代の手が、火筒の剛毛が、更に七海を追い込んでくる。

「も、もう、やめてくれ・・・! これ以上は、もう・・・あああぁん!」

 七海の哀願も、男たちの責めで遮られる。

「ああ、今回ギブアップは認められないからな。当然だろう? 要田選手が負けたら、それで人生が終わりだからな」

(そうだった・・・この試合に勝たなきゃ、あたしは・・・!)

 裏の世界での契約。これを破ればどんな報復が待っているか。ならば、勝つしかない。それしか七海の誇りは保てない。

(でも、でも、また・・・!)

「あっ、あっ、あっ・・・はあああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・っ!」

 快感の値が限度を超え、またも絶頂へと導かれてしまう。思わず仰け反り、火筒の剛毛に密着したことで拒否感と官能が高まり、切れ目なく達してしまう。

(あ、あたしが・・・わからせて、やらなきゃ、いけない、のに・・・)

 意識が遠のくがわかる。必死に繋ぎ止めようとしたのも空しく、七海は失神の海へと落ちていった。

「おや? 七海ちゃん、気を失ったみたいだね」

 七海が失神したと見て、火筒はレフェリーへと視線を投げる。この先どうするのか、と。

「いや、今回失神KOは取らない。要田選手自身に、自分が何をしたのか、しっかりと『わかって』もらわないとな」

 レフェリーは冷酷に告げる。

「それじゃあ、要田選手に目を覚ましてもらおうか」

 レフェリーの指示により、一度火筒の拘束が解かれる。失神した七海の身体が、改めて大股開きの体勢とされて抑え込まれる。そのまま男たちは七海の乳房、乳首、ヒップ、秘部、淫核などを責め、目覚めを待つ。気を失っていても、七海は小さな反応を返している。

 やがて、七海の瞼がゆっくりと開く。

「・・・んっ・・・あっ・・・? えっ・・・!」

 状況が呑み込めず、七海が狼狽える。

「良く寝ていたなぁ、要田選手」

 七海の左乳房を揉みながら、レフェリーが笑いかける。

「寝ていたまま敗北を宣言しても、要田選手は負けを認めないだろう? なら、意識のある状態でしっかりと『わからせて』あげようかと思ってな」

「・・・い、いやだ、そんなの・・・ふやぁあん!」

 ようやく理解が追いついた七海だったが、男たちのセクハラに喘ぐしかできない。

「それじゃ、要田選手、しっかりとカウントを取るからな」

 七海の上から退いたレフェリーが腹這いとなる。火筒と尾代は七海を押さえたままだ。七海は全裸で開脚を強いられたまま、敗北のカウントを聞かされる。

「ワーン・・・」

 レフェリーがわざとゆっくりとリングを叩く。

「ツーゥ・・・」

(くそぉ・・・返さなきゃ・・・負けが、決まっちまう・・・!)

 心はそう思っても、数えきれないほど絶頂を経験させられた身体は動こうとはしない。そして、レフェリーが最後のカウントを取るため、大きく右手を上げる。

「・・・スリーッ!」

<カンカンカン!>

 敗北のゴングが無情に鳴らされる。この瞬間、七海の運命が決まった。

(そんな・・・あたしが、負けた・・・)

 三連戦など、七海の実力なら楽勝だと思っていた。しかし最終戦で化け物のような老人に敗北し、お情けの追加試合にも敗北してしまった。

 放心したままの七海に、レフェリーが話しかける。

「それじゃあ要田選手、これからずっと宜しくな」

「・・・っ」

 敗北したときの条件である「<地下闘艶場>での永久就職」。今日の試合を体感させられたことで、今後もこのような試合を組まされることが想像できる。裏の世界での催し物だ、逃げ出すことができるかどうか・・・

 しかし、その思考も男たちのセクハラに遮られる。決着がついたというのに、未だに七海の身体を好き勝手に触っているのだ。

「試合は、もう、終わったんだろ・・・? いいかげんに、退けよ・・・!」

 七海の言葉に、レフェリーが首を傾げる。

「何を言っているんだ? 今まで自分勝手な正義感で、多くの人たちに『私刑』を行ってきたんだろう? 今日はたっぷりと、被害者の気持ちを味わってもらうからな」

(被害者の・・・気持ち・・・?)

 レフェリーの言葉が、男たちの責めが、七海の記憶の扉を開く。

(う、うぅぅ・・・)

 七海の脳裏に、あの日の光景が蘇る。家を出た、16歳のあの日のことを。

 七海の母親は、しょっちゅう男を引っ張り込んでいた。何度も結婚と離婚を繰り返し、それでも新しい男をすぐに捕まえてきていた。

 あれは蒸し暑い夏休みのある日、母親が用事で居ない日だった。何人目かの父親が、七海の部屋へと突然入ってきたのだ。エアコンをつけてうたた寝していた七海が気づいたとき、上着だけでなくブラまでもがずらされ、義理の父親に舐め回されていた。

 この状況に、七海は恐怖を覚えていた。手足が動かない。普段から練習していた筈の総合格闘技、その技術を忘れてしまったようだった。

「へへっ、やっぱり若い子の肌は違うぜ。脂ののったあいつの肌も良いが、まだ熟れてねぇ感じもたまんねぇ」

 男は七海の乳房を下から支えるように持ち、揉みながら乳首を舐めしゃぶる。

「しかもあいつよりおっぱいがでけぇときたもんだ。マジでたまんねぇ」

 男は七海の乳房を揉み上げながら、乳首を扱く。快感などまるでなく、七海は恐怖しか感じない。

 そのときだった。

「くそっ、もう辛抱できねぇ!」

 男が自分のズボンを下着ごとずり下ろすと、立ち上がったイチモツが飛び出てきた。

「ひぃっ!」

 初めて目にする異性の勃起した性器に、七海は悲鳴を上げていた。

「そんなに怯えるなよ、お前を気持ち良くしてくれるんだぞ?」

 男は七海の反応が嬉しいのか、七海の目の前に突きつけてくる。七海は目をぎゅっと瞑り、必死に顔を背ける。

「初心な反応してくれるぜ」

 鼻の下を伸ばしたままの男は、七海の秘裂へと手を伸ばす。

「なんだ、濡れてねぇな」

 舌打ちした男は、自分の手に唾液を落とし、自分のモノに塗っていく。その間、七海は恐怖に震えるだけだった。

「現役の女子高生かよ、たまんねぇぜ」

 男は口についた唾液を乱暴に拭い、自分の腰のモノを掴む。

「安心しろよ、あいつには黙ってればわかんねぇから」

 男は唾液に濡らした亀頭を、まだ誰も触れたことのない七海の秘裂へと擦りつける。生暖かい不快感が七海へと伝わる。

 このままでは犯される。貞操の危機に、七海の本能が目覚めた。

 気づけば、七海は男を叩き伏せていた。目を腫らし、鼻血を垂らし、折れた右腕を押さえて呻く男をもう視界にも入れず、震える手でバッグへと身の回りの物を詰め込んでいく。

 家の鍵は持たず、それでも靴はしっかりと履いて、七海は自宅を後にした。二度と戻ることもないと心に誓って。

(そうだ・・・あたしは、あのとき・・・)

 義理の父親から襲われた、あの貞操の危機の日。

 七海が女性に乱暴を働いた男たちに「私刑」を行うのは、あの夏の日の自分を振り払うためでもあったのだ。

 しかし今。七海は三人の男たちに全裸へと剥かれ、身体中を好き勝手に嬲られている。

 唇は火筒に奪われ、口の中まで舌で舐め回されている。

 乳房と乳首はレフェリーに玩具にされ、捏ね回され、扱き上げられている。

 秘部は尾代に吸いつかれ、秘裂や淫核を舐め回されている。

(あたしは・・・いったい・・・)

 精神が、官能に蝕まれていく。

(あたしが、わからせてやる側・・・じゃ、なかった・・・の・・・?)

 あまりの淫虐に、今までの価値観が崩れていく。

 不意に、元橋の問いが蘇る。

『お嬢さん、自分がやらかしたことを理解していますかな?』

との問いが。

(あたしは・・・あたし、は・・・)

 答えがわからぬまま、そこで七海の意識は途切れた。

「あれれ? 七海ちゃん、また失神しちゃった?」

 火筒の呟きに、レフェリーは男たちに責めを止めさせる。

「さすがにこれ以上はまずいだろう。まあ、要田選手とはまた遊べるさ。これからいつでも、な」

 レフェリーの嘲笑に、他の二人も欲望の笑みを浮かべる。そして、男たちは七海を残したまま、リングを後にした。

 リングに横たわる美少女の裸体に、粘ついた視線が突き刺さる。それは美少女が受けた淫辱と、これから美少女に待つ運命を想っての欲望だった。

 七海が今まで正義だと思って実行してきた「私刑」。その代償は、あまりにも大きかった。



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