二回戦第二試合
 (藤嶋メイ 対 天現寺久遠)

「それでは、二回戦第二試合を行います!」
 黒服の合図と共に二人の女性がリングへと上がり、中央で睨み合う。
「赤コーナー、『メイ・ビー』、藤嶋メイ!」
 「藤嶋メイ」。18歳。身長163cm、B84(Dカップ)・W56・H82。耳の辺りでばっさりと切った髪。ボーイッシュな童顔。スレンダーながらも出るところは出ているスタイルの良さ。その見た目とは裏腹に、インターハイの空手の部で防具つき試合にもかかわらず、KOの山を築いて優勝を飾っている。
 一回戦は蒲生漣次の寝技に苦しめられたが、最後はKOで勝利している。
「青コーナー、『闘う歌姫』、天現寺久遠!」
 対するは「天現寺久遠」。17歳。身長166cm、B87(Eカップ)・W60・H90。鋭い眼差し、すらりと通った鼻梁、太い眉、肩の長さでぶつ切りにされた髪、縛られることを嫌う野性的な美貌。普段はバイトをしながらストリートライブを行っている。
 一回戦はマンハッタンブラザーズの二人と闘わされる変則マッチだったが、見事勝利を挙げている。
「レフェリーは九峪志乃です」
 志乃は今日もミニスカート姿だった。もう開き直ったようで恥ずかしがる様子は見えない。メイと久遠を呼び寄せ、諸注意を与えた後でボディチェックを行い、凶器を隠していないことを確認してからゴングを要請する。

<カーン!>

 先に動いたのはメイだった。摺り足で距離を詰め、ノーモーションでの右突きを放つ。鋭い一撃だったが、久遠は顔を傾ける最小限の動きでこれをかわしていた。
「しっ!」
 その顔を傾ける力を使い、ボディブローを放つ。これをかわせないと判断したメイは、腹筋に力を込めてこれを受ける。
「ぐっ!」
 しかし、久遠のパンチ力は予想を上回った。腹筋を鈍い痛みが突き抜ける。一瞬動きが止まったところに、追撃の左フックを叩き込まれた。その威力に後退し、ロープに背が当たる。
「ふん、空手っつってもこんなもんか?」
 久遠の科白に、メイの眉が吊り上がる。
「空手家を・・・舐めるなっ!」
 メイの咆哮と同時に、久遠の顔面への突きが迫る。また最小限の動きでかわしかけた久遠だったが、鳩尾に何かが突き刺さった。
「お・・・ぐ・・・」
 顔面突きと同時に放たれたメイの前蹴りだった。
「せいりゃぁぁぁっ!」
 気合と共に、メイが後ろ回し蹴りを叩き込む。この一撃で、久遠がコーナーまで吹っ飛ばされた。
「立て! これくらいで終わる奴じゃないだろう!」
 コーナーに寄りかかっていた久遠に、メイの叱咤が飛ぶ。
「・・・よくわかってるじゃないか」
 闘争心に両目を燃やしながら、久遠が両膝を踏ん張って立ち上がる。メイは久遠がリング中央に来るまで待った。
「待たせたな」
「ああ」
 視殺戦も僅かの間だった。動いたのは同時だった。
「しっ!」「おらぁっ!」
 両者とも同時に相手の頬を殴り飛ばしていた。
 その後も足を止めて殴りあう。負けん気が強いメイも久遠も、一発貰えば一発返し、殴られれば殴り返し、蹴られれば蹴り返す。
「せいっ!」
「このぉっ!」
 しかし、次第に練習量の差が出始める。メイは日々空手の稽古に励んでいるが、久遠は格闘技の練習などせず天性の才能だけでここまで来た。
「くそぉっ!」
 自分が押され始めたことを敏感に感じ取り、苛立った久遠が大振りのアッパーを放つ。この一撃はメイの鼻を掠め、上空へと抜けて大きな隙を作る。
「セェェェイッ!」
 がら空きになった久遠の胴に、メイの突きの連打が叩き込まれる。
「ぐぅぅっ」
 久遠の体がふらりとよろめく。
(好機!)
 止めを刺そうと前に出たメイを、久遠のバックハンドブローが捉えた。
「あ・・・が・・・」
 メイの焦点がぼやけ、腰が落ちる。しかし、久遠も先程の一撃が精一杯の反撃だった。とどめの一撃を放つことができない。
「どうした、ファイト!」
 膠着した状況に、志乃が両者を促す。
「くそぉっ・・・」
「ちぃっ」
 先に動いたのはどちらだったか。
 両者のハイキックが同時に相手のこめかみを打ち抜く。互いに体重を乗せた一撃はカウンターとなり、メイと久遠はリングに崩れ落ちた。そのまま立ち上がろうとしない二人に、志乃がテンカウントを進めていく。
「ワン・・・ツー・・・スリー・・・」
 カウントが進む中、メイと久遠が身じろぎする。
「・・・ファイブ・・・シックス」
 相手の顔を見据え、立ち上がろうと四肢を動かす。しかし、頭部への衝撃がそれを許さない。立ち上がるという、普段ならなんでもない動作に、残った力を全て注ぎ込む。
「・・・エイト・・・ナイン・・・」
「くっ・・・」
「うぅぅぅ・・・」
 メイが仰向けの状態から肘をついて上半身を起こし、久遠がうつ伏せの状態から腕の力で上体を上げる。
「・・・テン!」

<カンカンカン!>

 それでも二人とも、再び立ってファイティングポーズを取ることはできなかった。ゴングを聞き、再びリングに倒れ込む。二人の美少女の壮絶な打撃戦に、会場からは拍手が鳴り止まなかった。


 二回戦第二試合 両者ノックアウト
  (リザーブ選手が三回戦へ)


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