二回戦第五試合
 (元橋堅城 対 沢宮冬香)

「これより、二回戦第五試合を行います!」
 黒服の合図と共に、二人の男女がリングへと上がる。
「赤コーナー、『最強老人』、元橋堅城!」
 元橋の軽い一礼に、観客席から凄まじい声援が起こる。一回戦では森下恋にほぼなにもさせず、半裸にしてから散々嬲ってギブアップを奪っている。その実力に、観客も大きな期待を抱いていた。
 今日もいつものように黒い道衣を着込み、顔には微笑がある。
「青コーナー、『ベアパンツ』、沢宮冬香!」
 「沢宮冬香」。21歳。身長161cm、B86(Dカップ)・W59・H90。ショートカットにされた栗色の髪。鋭い光を放つ目と細い眉。常に結ばれた唇。見る者に意志の強さを感じさせる整った顔立ち。現在大学生で、テコンドー同好会に所属している。大学対校試合で活躍し、オリンピック候補に挙がったほどの実力の持ち主。
 一回戦は茨木美鈴と対戦し、その性格と闘い方に翻弄されたものの、なんとか勝利することができた。

 この試合のレフェリーはいつもの小悪党面だった。元橋のボディチェックを終えたレフェリーは、嫌な笑みを浮かべて冬香の前に立つ。
「さ、冬香選手もボディチェックを受けて貰おうか」
「あんたなんかに触られるくらいなら、失格になったほうがマシよ! このド変態!」
 反射的に冬香は叫んでいた。
「なんだと、それなら望みどおり失格に・・・!」
 頭に血が上ったレフェリーが冬香の負けを宣言しようしたとき、対戦相手の元橋がレフェリーを抑える。
「まあいいではないですか。私は構いませんよ」
「いや、あんたが良くてもだな・・・」
「私は構いません、と言いましたが?」
 静かに微笑む元橋の迫力に、レフェリーが固まる。
「・・・わかった」
 そう言うのが精一杯だった。レフェリーは一度大きく深呼吸すると、ゴングを要請した。

<カーン!>

「元橋さん、お礼は言いませんよ」
「なに、そんな気遣いは無用ですよ」
 冬香の投げた言葉に、元橋は笑顔を返す。
「そう、なら遠慮はいりませんよね!」
 冬香が一瞬で間合いを詰める。
「せいやっ!」
 冬香の蹴りが、唸りを上げて元橋に襲い掛かる。寸前まで動かない元橋に、冬香は着弾を確信した。
「!?」
 自分が宙に舞ったのだと気づいたのは、背中からリングに落ちてからだった。しかもその短い間に、元橋がテコンドー着の上を脱がしてしまっている。
「!」
 慌てて立ち上がり、元橋を睨む。
「なんだ、今日のブラはひよこか。相変わらず乙女趣味だな」
「う、うるさいエロレフェリー!」
 レフェリーの指摘どおり、冬香のブラにはたくさんのディフォルメされたひよこがプリントされていた。
「元橋さん・・・私、信じてたのに」
「おやおや、勝手に信じられても困りますなぁ。ここがどういう場だか、もうおわかりでしょうに」
 やんわりと返しながら、元橋は冬香の上着をリング下の黒服に渡す。
「・・・そうね、信じた私がバカだったわ。もう容赦しないから!」
 元々鋭い冬香の目が、更に細められる。
「せぇぇぇいっ!」
 気合と共に、先程とは比べ物にならない速度で蹴りの連打を繰り出す。
「むっ!?」
 元橋ほどの達人が、冬香の蹴りへの反応が遅れた。右太ももと左胸を蹴られ、残りは両手両脚を使って防御する。
「おい爺さん! なに油断してるんだ!」
 レフェリーの言葉に、元橋は苦笑する。
「油断、ではなく沢宮さんの実力ですな。恐ろしい人だ」
「まいったするなら今のうちよ!」
 元橋の謙遜を冬香は本心と取った。
「ま、もうちょっとだけ頑張ってみますよ」
「そう、でも手加減しないから!」
 再びマシンガンのような冬香の連打が開始される。しかし、元橋に当たらない。黒い道衣に掠るだけでその身に届かない。
(なんでこんなにギリギリでかわされてるのよっ!)
 注意が逸れたのは一瞬だったが、その一瞬で間合いを詰められていた。
「あっ!」
 脚を刈られ、体が宙に浮く。その一瞬で両脚からテコンドー着が消えていた。
「なっ、なっ、何を!」
 受身を取って立ち上がり、前を隠す。
「やっぱり下もひよこか。『ベアパンツ』じゃなくて『ひよこパンツ』だな」
「う、うるさいっ!」
 揶揄してくるレフェリーを睨むが、下着姿にされた羞恥に冬香の頬が紅潮する。
「さて、これで残るは下着だけですな。ギブアップをお奨めしますが」
「・・・余計なお世話よっ!」
 怒りに駆られた冬香が、鋭い横蹴りで元橋に迫る。
「おっと」
 しかし元橋の体は冬香の下に潜り込んでいた。次の瞬間には冬香を寝技に引き込み、胴締めスリーパーに捕らえていた。
「そんな・・・あっ!」
 元橋の左手が、冬香のバストを優しく責める。
「やめて元橋さん! 胸触らないで・・・ふぁっ!」
「まあまあ、そう言わずに。これだけ柔らかいのに張りがあるんです、触りたくなるのは仕方がありませんぞ」
 冬香の抵抗を軽くいなしながら、元橋はバストを責め続ける。
「そんなこと言っても駄目なんだから・・・んんっ!」
 冬香の抗議もバストへの刺激で止められる。
「さて、ではそろそろ直に触らせて頂きましょうか」
 元橋によってブラがずらされ、冬香の乳首が露わとなる。
「あっ! 駄目だってば元橋さ・・・ひぅっ!」
 乳首を摘まれると何も言えず、口から零れるのは喘ぎ声だけだった。
「や、駄目、だから・・・」
「そうですか。ならば、こちらを触りましょうかな」
 乳首を責めていた元橋の左手が離れ、ひよこパンティの中に潜り込む。
「駄目ぇぇぇっ!」
 秘部を直接責められ、冬香が叫ぶ。しかし元橋は責めを止めず、冬香から快感を引き出していく。
(駄目、元橋さん上手すぎる! このままじゃ・・・!)
 冬香が幾らもがこうとも、元橋の拘束から逃れることができない。元橋の手が動くたび、官能の炎で身体の内側から炙られる。
「随分感じやすい体質のようですな。もうこんなになってますぞ?」
 元橋の手がパンティから抜かれ、冬香の顔の前に差し出される。
「・・・!」
 その手は、冬香の愛液に濡れていた。
「なんだ、相変わらず感じやすいんだな。乳首も硬くして、気持ちいいんだろ?」
「そ、そんなこと・・・ひぁっ!」
 にやつくレフェリーに反論しようとして、元橋の責めに嬌声を上げる。
「沢宮さん、嘘を吐いてはいけませんなぁ。気持ちいいときは気持ちいいと言って頂けるほうが、男は喜びますぞ」
「そ、そんなこと・・・ひぐっ、絶対に言わない!」
 必死に首を振る冬香だったが、元橋の巧みな愛撫に快楽指数が一気に跳ね上がる。
「も、もうギブアップするから! もうやめてぇ!」
 冬香のギブアップを聞き、冬香が責められる姿に見入っていたレフェリーが慌てて試合終了の合図を出す。

<カンカンカン!>

 ゴングを聞いた元橋は冬香の拘束を解いた。
「すみませんが、これも仕事でしてな」
「ふざけないで! 私にあんなことをしといて!」
 跳ね起き、胸元を隠した冬香が噛みつくような勢いで抗議してくる。
「雇われの身としては、こういうことをせねばクビになるのですよ。申し訳ありませんな」
(それに、次が本番。ここで苦戦するわけにはいかんのですよ)
 元橋の気持ちは既に、三回戦で対戦するであろう王美眉との闘いに向けられていた。
「それでも・・・あふっ!」
 詰め寄ってくる冬香の淫核を正確に突いて腰砕けにさせ、それを見もせずに元橋はリングを降りた。
(さてさて・・・王美眉さん、老人を労わってくれますかなぁ)
 首を一つ鳴らした元橋は、花道を悠然と下がっていった。


 二回戦第五試合勝者 元橋堅城
  三回戦進出決定


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