三回戦第二試合
 (虎路ノ山 対 ダークフォックス)

「これより、三回戦第二試合を行います!」
 黒服の合図と共に、二人の選手がリングへと上がる。
「赤コーナー、『喧嘩相撲』、虎路ノ山!」
 最初にリングインしたのは虎路ノ山だった。スパッツの上からまわしを締め、手足の指にはバンテージを巻いている。頭に丁髷が乗っているのは相撲取り時代の名残だ。
 一回戦では九条雪那を嬲り、二回戦ではビクトリア・フォレストの油断を衝いて勝利した。
「青コーナー、『堕ちた純真』、ダークフォックス!」
 「ダークフォックス」。本名来狐遥。17歳。身長165cm、B88(Eカップ)・W64・H90。長めの前髪を二房に分けて垂らし、残りの髪はおかっぱくらいの長さに切っている。目に強い光を灯し、整った可愛らしい顔に加え、面倒見が良く明るい性格で両性から人気がある。普段は「ピュアフォックス」という覆面レスラーとしてプロレス同好会で活動している。
 一回戦は恵比川福男に勝利し、二回戦では本多柚姫と闘って勝利している。今日も前回同様、黒のコスチュームで統一している。
 レフェリーはいつもの小悪党面だった。
「レフェリーさん久しぶり♪ 今日もボディチェックするの?」
「え、ああ、それは・・・」
「するのはいいけど・・・厭らしいのは、な・し・よ♪」
 にこやかな笑みで告げるダークフォックスだったが、その目は笑っていなかった。
「わ、わかってる。当たり前じゃないか」
 冷や汗を浮かべたレフェリーはダークフォックスと虎路ノ山に軽いボディチェックを行い、すぐにゴングを要請した。

<カーン!>

「むふぅ、これはムチムチレスラーではないか! 女子高生だと聞いていたが、色っぽいのぉ!」
 虎路ノ山は巨体を揺らし、ダークフォックスに近づいてくる。
(さて、と。こういう巨漢には膝攻撃がセオリーだけど・・・)
 ダークフォックスは巧みに距離を取りながら、攻撃の組み立てを考えていく。
「シッ!」
「ぬっ!?」
 ダークフォックスのローキックの威力に、虎路ノ山が顔を歪める。続く連打も虎路ノ山の太ももを確実に捕らえ、ダメージを蓄積させていく。
(でも、こればっかりじゃ観客は沸かないし・・・)
 そろそろ次の一手を打つときか。思考の停滞の隙に、虎路ノ山の大きな手がダークフォックスの衣装の胸元に掛かる。次の瞬間、衣装の胸元は音高く引き裂かれていた。
「あっ!」
「ぬふぅ、間近で見るとこれまた・・・ぬぐはっ!」
 揺れながら露わとなったダークフォックスの乳房、この光景に思わず目を奪われた虎路ノ山は、打点の高いドロップキックに顔面を蹴り飛ばされていた。
「まったく、お気に入りのコスチュームを破くなんて。ちょっと酷いんじゃないかしら?」
 肢体にぴたりと張りつく衣装のため、ずり落ちて秘部が見えることはない。しかし、乳房を隠すものはダークフォックスの両手しかなかった。
「それは悪かったのぉ。しかし隠す姿が逆に色っぽいぞ!」
 蹴られた鼻を擦りながらも、虎路ノ山の表情が緩む。
「そう・・・ありがとっ!」
 ダークフォックスのローキックが虎路ノ山の左太ももを打つが、両手を使っていないためダメージが通らない。
「そんなへなちょこ蹴りなぞ効かんわっ!」
 ここぞとばかりに、両手を広げた虎路ノ山が突進する。
「しっ!」
 ダークフォックスの右掌底がカウンターで虎路ノ山の顔面を捉えたが、逆に手首を掴まれる。
「くっ!」
 咄嗟に引こうとした右腕は、虎路ノ山の手にがっちりと捕らえられていた。
「やっと捕まえたぞ。どぉれ、そっちの隠している手も貰おうか」
 虎路ノ山の右手が乳房を隠していた左手を持ち、一気に引き剥がしてしまう。
「あっ!」
 虎路ノ山のパワーには敵わず、Eカップの乳房が揺れながら姿を現す。
「ぬっふぅ、目の前で見るとまた格別! どれ、味はどうだ?」
 虎路ノ山はダークフォックスの両腕を吊り上げ、剥き出しの乳房に舌を這わせる。乳房だけでは終わらず乳首を舐め回し、唇で扱く。
「気持ち悪いから、放しなさい!」
 宙吊りの体勢のまま蹴りを出すダークフォックスだったが、腰の乗らない蹴りでは虎路ノ山の脂肪に跳ね返されるだけだった。
「ぬふふ、くすぐったいわぃ。無駄な足掻きよ!」
 虎路ノ山はせせら笑いながら、ダークフォックスの乳房を舐め続ける。
「この・・・!」
 ダークフォックスは一度両足の裏で虎路ノ山を蹴り、反動をつける。腹筋の力で膝を引き上げ、虎路ノ山に掴まれた手首を支点として顔面に蹴りを放つ。
「ぬぐふっ!」
 ぬるい蹴りなら幾らでも耐えられると過信していた虎路ノ山は、ダークフォックスの蹴りをまともに食らってしまう。痛みに手も放してしまい、ダークフォックスは自由を回復することができた。
「よくも人の胸を舐め回してくれたわね。お仕置きしちゃうわよ?」
 唾液に光る胸を隠し、ダークフォックスが危険な笑みを浮かべる。
「ふん、お前の攻撃など効きはせんわぃ!」
 まわしを叩き、虎路ノ山も不敵に笑う。
「そう・・・じゃあ、行くわよ?」
 ダークフォックスの姿が虎路ノ山の視界から消えた。
「なん・・・うごぉっ!」
 いきなり、虎路ノ山の左膝を痛みが襲う。ダークフォックスの低空ドロップキックだった。更に水面蹴りで右足を蹴られ、虎路ノ山の巨体がぐらつく。
「ぬぐっ、おのれぇっ!」
 虎路ノ山の鈍重さを嘲笑うかのように、ダークフォックスの攻撃だけがヒットしていく。本気になったダークフォックスの動きは、まるで疾風を思わせた。素早く動くために両手を胸元から外しているため、ダークフォックスのEカップバストが激しく揺れる。
「せいっ!」
 ダークフォックス十八番のフライングニールキックが虎路ノ山の顔面を捉える。
「ぬっぐ・・・まだまだぁ!」
 鼻血を吹き出しながらも、虎路ノ山はダウンを拒んだ。
「さすが元相撲取り、耐久力は凄いわね」
 そう呟いたダークフォックスがリングを蹴る。そのまま太ももで虎路ノ山の頭部を挟み、フランケンシュタイナーに切って取る。そのままフォールに入ろうとするが、伸ばされた虎路ノ山の手から逃れる。
「これでもまだ動けるの?」
 驚きながらも即座に次の手を打つため、虎路ノ山の背後に位置するコーナーポストへと走る。素早くコーナーポストに登ったダークフォックスが左手で胸元を隠しながら、人差し指を伸ばした右手を宙に回す。それに応え、観客席が沸く。
「ぬぐぐ・・・どこに行った?」
 ようやく立ち上がった虎路ノ山が周囲を見回す。
「こっちよっ!」
 その声に振り向こうとした虎路ノ山の後頭部から肩にかけて、柔らかいものが衝撃と共に巻きつく。
「なん・・・おぐっ!?」
 そのまま前方回転で頭部から落とされた。正体はダークフォックスのスワンダイブ式の<ウラカン・ラナ>だった。
「レフェリー、カウントは?」
 胸元を隠しながらフォールに入ったダークフォックスは、レフェリーに流し目を送る。
「ワン、ツー・・・スリーッ!」

<カンカンカン!>

 ダークフォックスの隠された胸元に目を奪われていたレフェリーは、つい普通のテンポでスリーカウントを取っていた。
「あ・・・しまった」
「ふざけたこと言ってると、お仕置きしちゃうわよ?」
 ダークフォックスの笑顔に、過去「お仕置き」で病院送りにされたことを思い出したレフェリーが固まる。
「ふふっ、冗談よ♪」
 一つウィンクしたダークフォックスは立ち上がり、手を振りながらリングを降りる。
 胸元を左手で隠し、右手だけで声援に応えるダークフォックスに、観客からは卑猥な冗談も投げられた。その野次にさえ投げキッスで応えるダークフォックスに、観客からの拍手と指笛は鳴り止まなかった。


 三回戦第二試合勝者 ダークフォックス
  準決勝進出決定


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