【一回戦第十一試合】
 (天現寺久遠 対 小四郎)

「一回戦第十一試合を行います!」
 黒服の合図と共に、二人の男女がリングに上がった。
「赤コーナー、『闘う歌姫』、天現寺久遠!」
「天現寺久遠」。17歳。身長166cm、B87(Eカップ)・W60・H90。鋭い眼差し、すらりと通った鼻梁、太い眉、肩の長さでぶつ切りにされた髪、縛られることを嫌う野性的な美貌。普段はバイトをしながらストリートライブを行っている。
 前回のシングルトーナメントでは一回戦でマンハッタンブラザーズの二人を相手に勝利を挙げ、二回戦では藤嶋メイと壮絶な殴り合いを演じて引き分けとなっている。
「青コーナー、『ザ・ニンジャ』、小四郎!」
 久遠に対するのは小四郎だった。今日も忍装束でリングに佇んでいる。
「ふーん、今も忍者っているんだな」
 たいした関心もないのか、久遠はそれだけ言って首を回した。
 この試合を裁くのはいつものレフェリーだった。
「さて天現寺、今日こそはボディチェックを・・・」
 久遠の身体に手を伸ばしかけたレフェリーだったが、黙って指を鳴らす久遠に動きが止まる。
「いや、ボディチェックをだな・・・」
「・・・」
 更に無言で視線を飛ばされ、目を逸らしたレフェリーはゴングを要請した。

<カーン!>

「ボディチェックを受けようとしないとは、我侭なおなごだ」
「ああ? あんなふざけたボディチェック受けるわけないだろ」
 苛ついた口調で吐き捨てた久遠が、オープンフィンガーグローブを嵌めた拳を一閃する。
「がふっ!」
 伸びのある左ジャブが小四郎の顔面を捉え、後退させる。
「くっ」
 仕切り直しを狙ってか、小四郎が更に距離を取ろうとする。
「逃がすかっ!」
 久遠が小四郎に肉薄した瞬間、小四郎は逆に距離を詰めていた。
「ぬんっ!」
 小四郎は久遠の腰を抱え、一気に後方へと投げ捨てる。
「ちぃっ!」
 意表を突かれたというのに、久遠は受身を取って見せた。しかも受身を取る寸前、小四郎の右側頭部に肘を叩き込んでいる。そのため投げの威力が鈍り、受身が間に合った。
「ちっ、油断した・・・!?」
 舌打ちしながら立ち上がった久遠だったが、背後から抱きつかれたことに驚く。
「今も油断していたな」
 素早く久遠の死角に入った小四郎だった。背後から拘束しようという狙いだったが、その手は意図せず久遠のバストを掴んでいた。
「むぅっ? これは見た目以上のボリューム・・・」
「何してやがる!」
 一瞬動きの止まった小四郎の手を逆に捕まえ、久遠が後方に頭突きする。
「がぶふっ!」
 これが見事に小四郎の顔面を捉え、鼻を潰す。
「おらぁぁっ!」
 振り返った久遠のアッパーが小四郎の顎をまともに打ち抜き、一瞬ではあるが宙に浮かせる。小四郎の目が裏返り、そのままリングに倒れ込む。

<カンカンカン!>

 この様子を見たレフェリーは即座に試合を止めた。
「ったく、相変わらずエロい奴ばっかりか」
 久遠は一度首を振り、リングを後にした。


 一回戦第十一試合勝者 天現寺久遠
  二回戦進出決定


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